名将サンパオリからオファーを受けた。

　後に「ペルーの至宝」とも呼ばれ、代表チームへのオファーを受けることになるペルーとの縁は、大怪我がもたらした産物だったのかもしれない。澤は当時をこう述懐する。

「正直、ペルーリーグについては何も知らなかった。レベルにも懐疑的でした。怪我がなければ、関心すらなかったかもしれない。ただ、最初のクラブのスポルティング・クリスタルがコパ・リベルタドーレスに出場する露出の多いクラブだったこと、そこで出場機会を得て、ペルーで1、2を争う名門でもやれるという自信がついたのは大きかった。そして、この経験が南米にどっぷりハマるキッカケにもなりましたね」

　私生活でもペルーの風土と妙にウマがあった。4000mを超える高地での試合、時にはサポーター同士の衝突でスタジアムに入れないこともあった。だが、異国の地での経験は澤にとっていずれも新鮮なものだった。

　チームを渡り歩くうちに、ゴールの数と比例して街中でサポーターから声をかけられる機会も増えていった。活躍が認められ、現アルゼンチン代表監督のホルヘ・サンパオリからオファーを受けるなど、着実にステップアップを重ねていく。

免許更新忘れてたのに許してくれた（笑）。

「ペルーでサッカー選手をやっていると得することが多いんですよ。以前、国際免許証の更新を忘れたまま、偶然警察に呼び止められたことがあったんです。署で事情を説明していると、エラい人が出てきて、『お前は、マサカツ・サワか!!!』と。僕のファンというその警官と話し込んで、結果的に許してくれたこともあった（笑）。

　デポルティーボ・ムニシパルでは、大事な試合でPKを外したことがあったんですが、サポーターからは『今まで俺達のためにたくさんのゴールを決めてくれた実績は、一度のミスじゃ変わらない』と声をかけてもらったことも。自分で言うのもなんですが……非常に愛された選手でしたね」

　'08年シーズンには、地球の真裏での活躍を聞きつけ、ペルーまで足を伸ばした鹿島アントラーズから正式なオファーが届いた。鹿島入団へと心が傾いた澤だったが、レイソルも負けじと、ペルーの山奥まで2度も訪ね、いかに必要な選手かと説いた。

「三顧の礼じゃないですが、レイソルがいかに自分を必要としてくれているかが身にしみた。まさか、こんな回り道をしてJリーグに入るとは思わなかったですが、それも自分らしくて面白いかな、と」

　こうして澤は2009年7月、レイソルに南米から逆輸入されることになった。

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