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日本産「ペルーの至宝」が柏に帰還。
澤昌克のレールを外れた南米人生。
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byGetty Images
posted2018/03/23 16:30
ペルー、ムニシパル在籍時代の澤。ペルーはロシアW杯最後の1枠に滑り込み、36年ぶりの出場を果たした。
「おじさんでも伝えられることはある」
そんな澤は今季のレイソルで、自身に求められる役割をどう捉えているのだろうか。
「正直、毎試合フル出場するというのは現実的に厳しくなっている。ただ、少しでも多くの試合に出場し、チームの勝利に貢献すること。それだけだと思うんです。'11年の優勝を知るメンバーは、タニ(大谷秀和)、桐畑(和繁)、クリ(栗澤僚一)に僕と、だいぶ減りました。チームメイトも変わり、周りは若い子ばかりですが、クリと並んで最年長のおじさんでもチームに伝えられることはある(笑)。
優勝したチームは、勝利に対する意識が並外れて高かった。ハートも強く、チームとして逆境でも諦めないという意志が前面に出ていたと思う。今までの経験をチームの若手選手にとってプラスになるよう、自分なりに伝えていきたい」
刺激がある挑戦を続けていきたい。
35歳を迎え、現役選手として残された時間は少しずつ終わりに近づいている。だが、膝の怪我も完治に向かいつつあるという澤は、近いうちに日立台のサポーターに姿を見せることに神経を集中させている。
「仮に僕のサッカー人生で1%でも上手くいっているところがあるとすれば、まだ現役を続けられていること。最低40歳までは現役と、自分の中で決めているので。今は、とにかく『お帰りなさい』と言ってくれたサポーターに元気なところを見せたい。
毎年、今年が勝負という想いでやっていますが、刺激がある挑戦を続けていきたい。正直、サッカーを離れると特にしたいことがない。というより、何もしたくない(笑)。
引退後ですか……。うーん、僕の場合祖国が2つあるみたいな感覚なので、スペイン語を活かしたり、ペルーとの関係性で何かするという選択肢もなくはない。でも、実は家事も全く苦にならないタイプなので、主婦のように子供たちと接する生活も全然アリですね」
ペルーであれ、日本であれ、そのスタンスは崩れない。照れ屋で冗談好きのベテランは、復帰の時期を見据え静かに闘志を燃やしている。