プロ野球PRESSBACK NUMBER
楽天ドラ2は187cm110kgの大物。
慶大で化けた岩見雅紀の壮大な夢。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph byTetsuo Asada
posted2017/12/11 07:00
その豪快なスイングはここ近年の大学野球であまり見なかったタイプ。岩見は楽天待望の大砲へと成長できるか注目だ。
最後の試合後、1時間半以上もサインし続けた。
そんな両親に次に見せようと思っていたのは、学生日本一に輝く姿だった。しかし、その思いは叶わなかった。
11月11日、明治神宮大会、慶大は環太平洋大に1-5で負けた。
試合後、神宮球場を出ると岩見のもとにサインを求めるファンが殺到した。陽が落ち冷えこんできたが。岩見は白シャツにセーターを着ただけで黙々とサインを続けた。
「どうする、打ち切ろうか?」と周りから声を掛けられても、「学生最後だし、せっかく並んでくれたので、最後の1人までサインします」とペンを走らせ続け、写真撮影にも笑顔で応えた。
その時間は1時間30分以上にも及んだ。
「僕はあまりサインをしなかったんですが、あんな事は、野球人生で初めてでした。野球人生の良い思い出になりました」
大学野球では、試合後必ずミーティングが待っていた。岩見ら慶大ナインは勝っても負けても、次への準備を怠らなかった。サインする機会を拒んでいたのではなく、時間が設けられなかったのだ。この日も勝っていたら当然、次戦のミーティングが控えていた。
しかし、この日だけは違った。
「後にも先にも、もうあんな日は来ないと思います。多くの皆さんが並んでくれて、ありがたかったです」
「日本を代表するホームランバッターになりたい」
監督に挨拶を済ませた後、応援に来てくれた両親が待っていたところに足を運んだ。「今までありがとう。学生野球はこれで終わりました」と、さらりと伝えた。
岩見にとって、試合後に何にもない日は、こうして特別な日になった。
慶大野球部員は、大学卒業と同時に野球に一区切りつける者が多い。だが、岩見はプロ野球選手という夢を叶え、走り続ける道を選んだ。そして、会見でもこう公言している。
「人間的にも、野球選手としても成長を続けたい。日本を代表するホームランバッターになりたい。そして、野球少年たちの目標となるようになりたい」
一軍キャンプメンバー入り、開幕一軍、そしてレギュラー争い。眼前のステップをひとつひとつ確実にクリアしていこうという意思を感じさせた