プロ野球PRESSBACK NUMBER
楽天ドラ2は187cm110kgの大物。
慶大で化けた岩見雅紀の壮大な夢。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph byTetsuo Asada
posted2017/12/11 07:00
その豪快なスイングはここ近年の大学野球であまり見なかったタイプ。岩見は楽天待望の大砲へと成長できるか注目だ。
ライトに由伸ネット、レフトに岩見ネット。
「今も何も変わらない、練習の毎日ですよ。日々、淡々と過ごしています」
野球部の寮はすでに退寮し、都内に居を移した。とはいえその後もハードスケジュールが続き、やっと落ち着いて来たところだ。
インタビューした野球部の寮は、練習グラウンドから道1本隔てただけの至近距離だ。そのグラウンド外野後方、バックスクリーン上には防球ネットがある。しかし以前の高さでは岩見の打球が飛び越えてしまう。だから今年ネット増設工事が実施されたばかりだった。
岩見はフリー打撃で飛距離135m超の打球を飛ばす。ネットの高さは左翼ポール際が15mから20mに、左中間から中堅は10mから18mに増設された。すでに右翼には“由伸ネット”が増設されていたが、今回はそれを3m上回って“岩見ネット”と命名された。
ネット完成時、大久保秀昭監督は岩見にこう話したという。
「左中間が岩見ネットになるから記憶だけでなく、記録、勝利に繋げてくれ」
また指揮官は「ライトに流せ。逆方向にも打って行け」と指導。すると岩見は今秋7本塁打を放ったが、レフト3本、ライト3本、バックスクリーン1本と全方位に打ち分けた。春までの14本のうち11本がレフト越えだったことを踏まえれば、両方向に長打を打てるようになったのは大きな成長だ。
「せっかく続けるならプロ野球選手を目指そう」
滋賀県大津市、琵琶湖から遠くない地で育った岩見は小学2年生の時に少年野球団に入った。それ以前も消防士である父・長司とキャッチボールはしていた。野球を始めるきっかけについて聞くと、こう返ってきた。
「特別な理由なんてないんですよ。何かスポーツ始めるのに、理由なんてありますか?」
スポーツ漫画読んで始めるとか……と返してみたが「そんなものでしょ、理由なんて」と岩見は笑い飛ばした。
子供の頃から大柄だった岩見は野球が続けたくて、甲子園常連校ではなく「当時、ほどほどに強かった」比叡山中学を受験し、入学した。中学で軟式、高校で初めて硬球を握った。ポジションは外野、高3春まではピッチャーも務めていたが、最後の夏は県大会準々決勝で高校野球生活に終止符が打たれた。
ここで、進路を決める岐路に立った。
「将来は消防士になろうのかなと、漠然と考えていました。でも野球を続けたくなり、せっかく続けるならプロ野球選手を目指そうと。プロになるなら関東の大学で続けて、より注目されなければならない」