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楽天ドラ2は187cm110kgの大物。
慶大で化けた岩見雅紀の壮大な夢。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph byTetsuo Asada
posted2017/12/11 07:00
その豪快なスイングはここ近年の大学野球であまり見なかったタイプ。岩見は楽天待望の大砲へと成長できるか注目だ。
デビューは2年春、主力定着は3年春と遅咲きだった。
プロになるためには強豪大学に行かなければ、スカウトの目にも届かない。そう思って高校の監督に相談してみると、慶大受験を薦めてくれた。
万が一そこで野球の道が閉ざされても、次の進路を選ぶためにも理想的だと考えた。現役合格した関西の大学には進学せず、一浪の末に入学。野球部に入部すると2年春、神宮デビューを迎えた。
「自分では、全く覚えていないんです。早慶戦で代打で出て三振したのは覚えているんですが。早慶戦のあの雰囲気は凄いですからね」
初ホームランは2年秋、レギュラー定着は3年春と遅咲きだった。最高学年となった今年も、春季リーグは優勝が懸かった早慶戦で負けた。秋も東大に1敗し、法大に勝ち点を落とす苦しいスタートだった。
それでも岩見はシーズン途中、前を向いていた。
「何としても早慶戦まで優勝の可能性が残るように勝ち続け、早稲田に2連勝して優勝を決めたい。優勝を知らない代がいない状況で卒業したい」
早慶戦で雪辱、優勝に思わず涙した。
そして最終週まで優勝の可能性を残すと、早慶戦で雪辱を果たす。岩見が1年生だった時以来の栄冠を手にした。
「優勝しても泣かないと思っていました。勝って泣いたのは、小学生の時以来でした」
岩見は人目をはばからず泣いた。仲間たちはその巨体を胴上げし、3回、宙に舞った。
「自分は大学時代、本当に恵まれていたと思います。決して順風満帆ではなく、バットにしっかりと球が当たるようになるまで、苦しいことも沢山ありました。でも慶應で、良かった」
リーグ優勝を決めて何より嬉しかったのは、両親にその姿を見せられたからだ。遠く離れた地元から応援に駆けつけてくれた両親は、神宮だけでなく部のグラウンドで行われた数々の試合にも足を運んでくれた。
「姉がバレーボールをやっていたんですが、母親から『もっと応援に行けば良かった。だから、あなたの試合は出来るだけ応援に行かせて』と言われた。自分は『ウン、いいよ』という具合でしたから」