“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
地獄から戻ってきたFW木戸皓貴。
明大のヒーローはプロになれるか?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/09/12 08:00
主将として明大サッカー部を率いた木戸。身体や技術だけでなく、精神面も大きく成長できた大学生活となった。
全治8カ月の大怪我。想像以上に苦しかったリハビリ。
診断の結果は、右膝前十字靭帯損傷と半月板損傷。
完全断裂ではなかったが、5割以上の靭帯が切れていたため、結果として完全断裂と同じ手術とリハビリを強いられることになった。全治8カ月の大怪我である。
「それまでタレント集団と呼ばれた明治でスタメンに入って、調子も悪くなくて、まさにこれからのときの大怪我……。高3のときに左足第5中足骨を骨折して、2カ月離脱した以来の怪我で、膝を怪我するのも初めてだったし、復帰まで1年近くかかると聞かされて本当にショックだった。しばらくは、何も考えられませんでした」
そこから始まった地道なリハビリは、想像以上に苦しかった。
「1日、1日が本当に長くて……毎日毎日同じリハビリメニューの繰り返し。サッカーができないどころか、ろくに足も動かせない自分。悔しくて、悔しくて仕方が無かった。でも、一刻も早く復帰したいという、その一心でリハビリに取り組んでいました」
大怪我から1年後。再び同じ大会で、今度は左膝を。
必死のリハビリの末、年が明け、大学3年となった5月のリーグ戦で復帰を果たす。
復帰戦となった駒澤大戦で途中出場をすると、「公式戦を戦っている自分を感じるだけで幸せだったし、心からサッカーが楽しかった。そのときは『怪我をして良かった』とさえ思えたくらいだったんです」と、久しぶりに幸せな時間を過ごすことができたのだという。
失った時間を取り戻すべく、彼は急激に調子を上げていった。全日本学生選抜候補合宿に選ばれ、浦和レッズの練習参加も決まっていた。
しかし、復帰から僅か3カ月後の総理大臣杯。大会直前に古傷の右膝を少しひねり、数日離脱してしまったことで、彼の心に小さな焦りが生まれる。
「去年、怪我で離脱して最後まで戦えなかったからこそ、今回こそは最後まで戦い抜こうと。心のどこかで気持ちが早まってしまった」
決勝の順天堂大戦でスタメン出場した木戸は、30分に相手DFとルーズボールを競り合う。その時に踏ん張った左膝から、1年前と全く同じ音が鳴り響いた――。
診断結果は左膝前十字靭帯損傷。
重症度は前回と全く一緒だった。
「言われたときは真っ暗。何も考えられなかった。一気に自分の存在に自信が無くなった」