“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
地獄から戻ってきたFW木戸皓貴。
明大のヒーローはプロになれるか?
posted2017/09/12 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「あいつは怪我で終わったなー」
明治大学サッカー部4年のFW木戸皓貴(こうき)は、ついこの間まで、そんな陰口を叩かれてしまうような状況にあった。
今季の大学サッカー界、木戸は、本来ならば主役中の主役になっているはずの男だった。
東福岡高時代からずば抜けた身体能力とスピード、パワー、そしてシュートテクニックを駆使し、ゴールを量産し続けたストライカーとして全国的に名を馳せ、注目を浴びている選手だった。複数のJクラブのスカウトが獲得に動き出していた最中、彼はあっさりと大学進学を選んだ。
「高3になった頃、即プロに踏み出す勇気までは実はなかったんで。その時の自分がプロになってそのまま通用するとはとても思えなかった。大学サッカーに進んで4年間、いろんな誘惑などもある中で、しっかりと自分と向き合った上で、サッカーに対して自信が付けば、その時はプロになろうと決めたんです」
そして満を持して入学した明治大では、いきなり1年から不動のレギュラーとして活躍してしまう。
“スーパールーキー”として頭角を現すと、彼の周りはその成長に大いなる期待を抱いた。
しかし、順風満帆なスタートを切った彼の大学サッカー人生は、2年目にして暗雲が立ちこめることになる。
ピッチ上で、右膝から「パチン」と乾いた音が。
大学2年の総理大臣杯の2回戦・北海道教育大岩見沢校戦でのこと。スタメン出場した彼がDF陣の裏に抜け出しボールをキープ。すぐに寄せて来た相手を切り返して交わそうとした次の瞬間……「パチン」。
乾いた音がピッチ上に鳴り響いた。
「すぐに痛みが走り、ただの怪我ではないことが分かった」(木戸)