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ウォリアーズ優勝の裏に隠された、
各選手の“取り返したかったもの”。
text by
長澤壮太郎Sotaro Nagasawa
photograph byJoel Angel Juarez/Anadolu Agency/Getty Images
posted2017/06/16 17:00
6月15日、地元オークランドで行われた優勝パレードで、ファンと喜びを分かち合うカリー。
クレイ・トンプソンがカリーをサポートするからこそ。
しかし彼は一切腐らず、攻撃面ではなくディフェンス面で一級品の実力を披露し、ファイナルではカイリー・アービング、レブロンそしてラブまでも防いでチームに勝利をもたらしたのだ。
カリーがカリーでいられる最大の理由は、クレイがカリーのマークマンを代わりに守る役目を全うしているからである。
勝利の美酒に酔いしれながらインタビューに答えたクレイは、「他のチームに行って主役になることよりも歴史的な王朝を作り上げる一員でいるほうがよっぽど良い」ときっぱり批判の声を黙らせた。
そして、ウォリアーズがもしこの先王朝を作り上げるとするならば、そのキーマンとなるのはドレイモンド・グリーンだろう。
ウォリアーズ王朝のキーマンはD・グリーン。
昨年の6月13日、ウォリアーズが王手をかけて臨んだファイナル第5戦。
彼の姿はオラクルアリーナにはなかった。出場停止を食らった彼は、アリーナに入ることが許可されない。ただ、この試合でウォリアーズが勝ち優勝が決まれば、試合後はアリーナに入ってチームメイトと喜びを分かち合える可能性があった。だから彼は、オラクルアリーナに隣接するオークランド・アスレチックスの球場のVIPルームで、野球の試合を目の前にテレビでチームの試合を見届けるしかなかった。
彼のエージェントであるBJ・アームストロングやGMのボブ・マイヤーズも、オラクルアリーナではなく同じVIPルームで彼と過ごした。自分のせいでチームに迷惑をかけたこと、コートに立たせてもらえないあの時の気持ちをグリーンは振り返り、「人生で一番辛かった。自分の生き方を見つめ直すしかなかった」と語った。GMのマイヤーズも「一緒に部屋でチームの試合を見ている状況自体が絶対に起こってはいけないこと。2度と繰り返したくない」と彼に伝えた。グリーンのいないその試合から流れは激変、王手から逆転負けを喫したのだから。
それから1年間、彼は流れを殺した張本人、優勝を逃した戦犯扱いをされてきた。
グリーンは、失敗から学んで絶対に王者に輝くことを心に決めていた。
さらに昨年の第7戦敗退直後、優勝を逃した彼は着替えを済ませて帰宅するメンバーをよそにロッカールームで携帯から2人の人物に連絡をしたと言われている。
その内1人が、GMのマイヤーズ。
「即座に補強が必要だからどんなことをしてもチームをアップグレードしてくれ」と話した。もう1人には携帯メールで、「俺たちに足りないものが分かっただろ? お前が必要だ。王者になるために一緒にやろう」と送った。
シャワーを終え、失意の中帰宅した頃、彼の携帯に届いた返信には、「I'm ready.Let's do this.」と書かれていた。
返信の相手は、ウォリアーズに準決勝シリーズで負けたばかりのオクラホマシティ・サンダーのKDだった。
“最強のウォリアーズ”が生まれた瞬間だった。