屈辱的な醜態をさらした……昨年のファイナル。

　中心メンバーのステフィン・カリーは昨年のファイナルで膝の調子が悪く、いつものようなキレがなかった。普段だったら得意のドリブルで簡単に抜き去るような相手も抜けず、相手ディフェンスのプレッシャーに勝てなかった。

　キャブスのセンターのトリスタン・トンプソンは、カリーにスイッチした際に大声で「ヘルプはいらない！」と仲間に伝え、カリーを抑え切った。勝負を決する第7戦では、ディフェンスが穴だと言われていたケビン・ラブに対し1対1で2回仕掛けるも全く抜けなかった。

　ウォリアーズの中心として屈辱的な醜態をさらした昨年のパフォーマンス。

　迎えた今年のファイナル。カリーは、ラブにスイッチするチャンスで、ことごとく彼をカモにした。本来のキレを取り戻したカリーは、レブロン・ジェームズとの1対1の場面でも芸術的で華麗なボール捌きでキングを抜き去った。

　優勝を決めた後のインタビューで彼は珍しくカメラの前（しかもコート上）で葉巻を吹かした。同席していたクレイ・トンプソンが「美味しそうだね！」と声をかけると、カリーは笑顔で「この葉巻は、昨年優勝後に吸うために用意していた物だけど、負けたから吸うチャンスがなくなった。あの時の悔しさを絶対に忘れないように、友人に頼んで1年後に雪辱を果たすまで保管してくれと頼んだやつなんだよ。これでやっと吸えるようになった」と言った。

　スティーブ・カーヘッドコーチをはじめ、全てのウォリアーズの選手そして関係者がこのチームの良さを語る時に口にするのが、「全員が目標のために自ら率先して犠牲を払っている」というフレーズだ。

　その意味で、葉巻を楽しむカリーに話しかけたクレイは、最もチームに献身的だった選手と言える。

KDの加入で一番損をしたのは、クレイなのだが……。

　KDの加入後、新チームで一番損な役回りを課せられたのが彼だと言っても過言ではない。

　ウォリアーズの代名詞でもあるスプラッシュ・ブラザーズの片割れの彼は、73勝した昨年はチームの中心メンバーだった。しかし、KDの加入によって攻撃に関わる機会は激減し、チームの第2オプションから第3、時には第4オプションにまでなっていた。

　生粋のシューターである彼にとって、ボールを触る機会が減れば調子は狂い、明らかなスランプに陥った。

　周りからも、「今のシステムでは彼は不満を感じている」とか、「他のチームに行ってエースとして活躍するべきだ」という厳しい意見が絶えなかった。

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