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ブッフォン「愚痴りたいことがある」
届かなかったCL決勝、魔物の正体。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/06/06 11:10
ブッフォンの悲願はならなかった。彼がビッグイヤーを掲げる姿が観たかった、そういうファンは世界中にどれほどいたのだろうか。
クアドラドを退場させたラモスの謀略。
ベイルをサブに置き、さらにMFハメス・ロドリゲスをベンチ外にできるほど、レアルは過剰な戦力を持っていた。
アッレグリが決勝戦のレベルで使えたベンチ組は、実質MFクアドラドだけだ。そのクアドラドは、交代出場から20分も経たない84分に、相手DFセルヒオ・ラモスの謀略に引っかかって退場させられた。
クアドラドの軽いタッチに大袈裟に倒れたラモスの演技は狡猾といえば狡猾だが、CL決勝という舞台を知り尽くしているレアルの主将にしてみれば、初の大舞台で舞い上がっているアフロヘアの兄ちゃんを手玉にとってやった、くらいの感覚でしかないだろう。
10人となり集中力の切れたユーベは、途中出場のMFアセンシオの決めた90分目のゴールにも、もはや無抵抗だった。
ロナウドは、あらゆる記録を塗り替えていく。
4分のロスタイムが過ぎた。
ブリフ主審が笛を吹くと、FWロナウドは天に向かって吠え、その場に膝をついて仰向けに倒れた。
決勝で2得点したロナウドは、FWメッシを抜き去り通算12得点で大会得点王になった。恐るべきは、そのうち10得点を挙げたのが準々決勝以降の5試合、という大舞台での決定力だ。
カーディフでの2ゴールは、彼をCL史上初めて3度の決勝戦で得点した男にした。ロナウドはあらゆる得点記録を塗り替えていく。
「“ドゥオデシマ(12度目)”のビッグイヤーを獲って、誰も成し遂げられなかったCL2連覇を果たした。リーガも制して2冠も達成した。言うことないよ」
今年から緑の芝の上に戻った表彰セレモニーの後、日焼けサロンのモデルのようなロナウドは、試合の疲れなど微塵も見せずに白い歯を覗かせた。
「クラブW杯も勝つ。来年のCLも勝つ」