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ブッフォン「愚痴りたいことがある」
届かなかったCL決勝、魔物の正体。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/06/06 11:10
ブッフォンの悲願はならなかった。彼がビッグイヤーを掲げる姿が観たかった、そういうファンは世界中にどれほどいたのだろうか。
ジダンが仕掛けた“ディバラ潰し”が的中。
何より的中したジダンの策は、“ディバラ潰し”だった。
MFカゼミーロを中心とする中盤のカルテットは、準々決勝のバルセロナ戦で2得点したユーベの若きエースを完全に封じ込んだ。ディバラが抑えこまれたことで、1トップのFWイグアインもサイドのFWマンジュキッチも前線で孤立した。
61分、MFカゼミーロの勝ち越しゴールが決まった。
いつでも狡猾な半笑いを浮かべているカゼミーロは、ユーベ守備陣が一度凌いだ跳ね返りを正面からミドルで叩き込んだ。
GKブッフォンの反応はまたしても遅れた。ユーベMFケディラの足に当たったシュートは、史上最高の守護神といえども届かないコースに再び飛んだ。
“……またか”。
ブッフォンの視線が宙に泳いだ。
百戦錬磨のBBCトリオがボールウォッチャーに。
間髪入れず、レアルは畳み掛ける。失意のユーベ守備陣が立ち直る前に、MFモドリッチが右サイドを破る。
64分、彼の完璧なクロスをニアサイドに飛び込んだFWロナウドが完璧に合わせた。
準決勝までの12試合でわずか3失点、欧州最強を誇ったユーベ鉄壁の“BBCトリオ”は、ロナウドが飛び込んだ瞬間、全員がボール・ウォッチャーになっていた。
百戦錬磨のはずのDFバルザーリとDFボヌッチ、そしてDFキエッリーニが、理由もわからないまま呆然と立ち尽くした。
3-1とされた後、ユーベはMFピアニッチとDFアレックス・サンドロが立て続けに警告を受けた。CL制覇のために指揮官アッレグリがあれほどテクニック重視を謳ってきたはずのチームが、決勝の土壇場で粗さを露呈した。
明らかに気負い過ぎていたユーベのFWディバラは、78分でベンチに下げられた。
「ディバラこそ最も危険な選手」と警戒していたジダンは、かつて古巣ユーベで自らが背負っていた背番号21の後継者を冷酷に蹴落とすと、決勝戦のホスト国ウェールズの英雄MFベイルを投入。ミレニアム・スタジアムの興奮は絶頂に達した。