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WBCは“滑らせ変化球”こそ最強。
千賀と宮西が今後も頼れる理由。

posted2017/03/09 11:50

 
WBCは“滑らせ変化球”こそ最強。千賀と宮西が今後も頼れる理由。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

WBC球の特徴を把握した上で、“縦スラ”を駆使して見事なピッチングを見せた千賀。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Naoya Sanuki

 歯車が噛み合い出してきた。

 1次ラウンド2試合目のオーストラリア戦は、2回に1点を先行される苦しい展開だった。しかし先発の菅野智之(巨人)が序盤の投手戦をしのいで、5回に松田宣浩(ソフトバンク)の犠飛で追いつくと、7回に中田翔(日本ハム)の大会1号で勝ち越し。続く8回には4番・筒香嘉智(DeNA)の2戦連発のダメ押し2ランという侍ジャパンの鉄板パターンでの快勝だった。

「初回のチャンスを生かせず、少し重苦しい展開だったが、菅野が粘り強く1点で凌いでくれた。そこが逆転に繋がった」

 連勝でほぼ1次ラウンド突破が決まり、試合後には小久保裕紀監督の表情も自然と和んだものとなっていた。

 開幕前は心配していた打線も、筒香を中心に主役が揃い踏みと、不安が解消していったが、もう1つ、このオーストラリア戦で見えてきたのが、リリーフの陣容だ。

千賀の好投を支えた「縦のスライダー」。

「抑えは牧田です。皆さんにはお話ししていませんでしたけど、権藤コーチとの話し合いでもともとその構想だったので」

 牧田和久(西武)のクローザー起用を指揮官が明らかにしたのは、試合後のことだった。

 その牧田がこの試合では9回を3人でピシャリと締めたのだが、同時にこの試合の収穫だったのが、3番手で2イニングを1安打4三振に抑えた千賀滉大(ソフトバンク)と8回から1イニングを無安打2三振でつないだ宮西尚生(日本ハム)のピッチングだった。

「球場全体が応援してくれる中で投げるなんてなかなかない。力みかえって投げました」

 こう笑顔を見せたのは千賀だ。

 MAX155キロのストレートに落差の大きい“おばけフォーク”。

 4つ奪った三振のうち2つはストレートで残りの2つはフォークだったが、好投のもう1つのカギはWBC球の特徴を生かした縦に落ちるスライダーだった。

【次ページ】 「ひねり系」「抜き系」の球種は、WBC球の影響大。

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