サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
向かい風こそが五輪代表の「常態」。
故障で守備陣半壊のU-23、策は?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2016/05/23 12:20
岩波、植田、奈良が争うCBはチーム最大のストロングポイントだった。スタイルの根幹から見直しが求められる。
奈良、岩波、亀川……続々と故障選手が。
1月の最終予選でラインコントロールの巧みさを示し、今季から加入した川崎フロンターレで定位置をつかんでいた奈良竜樹が、5月14日のJ1リーグで左足を骨折してしまったのだ。
全治4カ月の診断は、リオ五輪に出場できないことを意味する。
さらに加えて岩波まで長期の離脱を強いられたら、手倉森監督の構想は根本的な練り直しを迫られてしまう。
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亀川を失ったサイドバックでは、1月の五輪アジア最終予選に出場した4人が強化の最前線から姿を消してしまった。
右サイドの松原健(アルビレックス新潟)と左右両サイドに適応する室屋成(FC東京)は、五輪出場決定後のチームに一度も合流できていない。左サイドの山中亮輔(柏レイソル)も、U-23日本代表の活動とケガが重なる不運が続く。
トゥーロンの大会期間中、様々な問題が渦巻く事態に。
中盤から前線にもケガ人はいる。
3月のポルトガル戦まで背番号10を背負ってきた中島翔哉(FC東京)、'14年1月のチーム結成当初からFWの中核を成す鈴木武蔵(アルビレックス新潟)、海外組の久保裕也(ヤングボーイズ/スイス)が、ケガやケガからの回復過程で南仏での活動に加わることができていない。
現時点でチームから離れている選手たちが、リオ五輪に出場できないと決まったわけでない。ただ、最終予選までのメンバーをこれほど多く使えない状況では、チームのレベルアップも、選手の見極めも、OAの必要性も、すべてが不確定のままトゥーロン国際が終わるのではないかという懸念が生じる。ゲームの内容を検証する以前に、チームの骨格が揺らいでしまっているからだ。
一番冷静なのは、手倉森監督である。
「世代全体を育てる」ことをチーム作りの幹に掲げてきた指揮官は、結成当初から数多くの選手を招集してきた。キャプテンの遠藤航(浦和レッズ)や中島、鈴木らがコアメンバーとなってきたのは、彼らが活動のたびに成果を積み上げていったからに他ならない。決して別格扱いしてきたわけではないのだ。
アジア最終予選とリオ五輪のいずれもが短期決戦であることを踏まえて、手倉森監督はチームの総合力を高めることに注力してきた。その結果として、世代全体に当事者意識が育まれていった。