サッカーの尻尾BACK NUMBER
2強の戦術の“対称性”、完全消滅!
らしさを捨てたバルサ、クラシコ制す。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2015/03/23 16:30
クラシコでは初得点となる決勝点を決めたスアレス。バルセロナとレアル・マドリーの勝ち点の差は4に広がった。
ルイス・エンリケ「時には別のスタイルも必要なんだ」
会見場では、ルイス・エンリケが自身が打ち出すサッカーについて語っていた。ルイス・エンリケの話はつまらないと誰もが言うけれど、この夜は饒舌だった。
「いくつもの策をもつべきだ。もちろん、今でもボールを保持し続けたいと思っているし、自陣からできるだけ遠い位置でプレーしたいと思っている。ただ、理想を突き進むだけでなく、相手がいることを忘れてはならない。サッカーとは相手があって成立するスポーツ。時には別のスタイルも必要なんだ」
相手のやり方やスタイル、試合展開によって変えるべきという考え方は、マスチェラーノ、あるいはイニエスタの発言にもある。
今やバルサの全員が、そんな考えを共有している。点が取れるのであれば、理想や形にこだわらず、カウンターを繰り返すべきなのだと。
2-1となった終盤はまさにそんな展開だった。
ネイマールが自陣からドリブルで独走し、相手エリアまで進む。メッシが自陣から持ち込みラストパスを送る。いずれも時間をかけないカウンターだ。
アンチェロッティ「バルサのカウンターは脅威だった」
「最後の30分間のバルサのカウンターは脅威だった」
アンチェロッティは疲れきった表情で語った。
この日はベンチだった、これまでのパスサッカーの中核、ブスケッツとシャビがピッチに立つと、そんなハイテンポにも抑えがかかることになったのは興味深い。
メッシ、スアレス、ネイマールを活かすには、このクラシコでみせたサッカーが最も効果的なのかもしれない。しばらくこの流れは続くだろう。
苦手とされたセットプレーからの得点と、裏への一本のパスからの得点、そして度重なるカウンターの数々。
クラシコに勝ったのは、バルサらしさを捨てたバルサだった。