サッカーの尻尾BACK NUMBER
バルサ×アトレティコ、CL初戦は1-1。
「量」を切り裂いたイニエスタの「質」。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2014/04/02 11:30
「準々決勝を突破できる可能性が何パーセントかは分からない。でも、次の試合も素晴らしい試合になるよ」と語るイニエスタ。勝点1差でリーガの首位争いでも競う2チームの激戦は必至。
試合前、シャビはある予測をしていた。
「間違いなく激しい試合になる。僕らMFのためのスペースもほとんどないだろう」
カンプノウでのCL準々決勝第1戦、はたして彼の予測は的中することになる。
アトレティコは統制された3ラインを作り、個々が対面のバルサ選手にぶつかっていく。
シメオネは元ボランチだったこともあってか、中盤の中央を突かれることを最も嫌う。
「中を狭め外に追い出せ」という約束事の下、守備時にはアルダとコケのサイドハーフまでもが中央に絞り、シャビとセスクを捕まえた。ボランチのガビとチアゴも含め、中盤中央を4人で埋め尽くしたわけだ。
試合のほとんどの時間、シャビやセスクの前にスペースはなかった。
シャビは振り返る。
「予想した通りだった。彼らはやはり激しかったし、それもあって均衡のとれたゲームになった」
「量」のアトレティコ、「質」のバルサ。
守備への献身と規律が徹底された現在のアトレティコは、守備戦術の完成度でリーガの2強を上回る。
4月の時点で2強と優勝争いを繰り広げているというのは、資金力や選手層を考慮するとほとんど奇跡に近いことでもある。
この日のバルサとアトレティコは、動きの量にも大きな差があった。アトレティコはボールを奪うと数人が一斉に散らばる。一方でバルサの選手は走り出す選手が少なく、ボール奪取後のスピード感は皆無。昨今の攻撃停滞の最大の原因だ。
マルティーノ監督はこの日も先発の選択において「動」ではなく、「質」を重視した。ボールを呼び込めるペドロとアレクシスはベンチに、一方でセスクとネイマールはピッチに立った。
しかしバルサの持ち味でもある「質」は、アトレティコの激しさと運動量に消されていた。
ジエゴの壮快なミドルシュートが決まったのは後半に入ってから。AS紙が「今季のCLでのベストゴールか?」と報じた華麗な一撃だった。アトレティコにとっては、貴重なアウェーゴールだ。
試合後、バルサの選手の多くが「あれはゴラッソだった」と首を振っていたくらいだ。