プロ野球亭日乗BACK NUMBER
短期決戦の諸刃の剣“絶対エース”。
楽天・田中、広島・前田の崩し方。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/16 14:00
10月12日に行なわれたCSファーストステージ初戦でも阪神を7回1失点に抑え、突破の原動力となった広島の絶対エース・前田健太。
堅い1点より、大量点で田中を“潰せる”か。
そこにファーストステージで爆発したロッテ打線が、その勢いを持続させて田中にぶつけていけるか。そのためにはあえて、田中から1点を取りにいく野球を捨てることも必要かもしれない。
例えば1回に先頭の根元俊一が塁に出たら、足のある2番の岡田幸文には送りバントではなくエンドランなど積極的に仕掛ける。そうして絶好調の井口資仁、今江敏晃、角中勝也、サブローへとつなげていく。一気呵成に序盤で田中を潰す――ぐらいの積極策をベンチがとれなければ、この絶対エースを打ち崩すことは困難だろう。
そのかわりもし田中を打って初戦をとれれば、アドバンテージを入れて1勝1敗のタイだが、楽天に与えるダメージは計り知れなく大きい。それこそが“流れ”というもので、勝ち上がってきたロッテの勢いは、一気に奔流となって楽天を飲み込む可能性も出てくるわけである。
逆に言えば、楽天にとっては初戦の田中の1勝は、ロッテの勝ち上がりの勢いを削ぐ意味でも、何が何でもとらなければならないものだ。
巨人キラーの前田健太は2戦目に万全で臨む。
一方、10月12日のファーストステージ初戦に先発して勝ち投手となった広島の前田は、その晩に宿舎で野村監督から、中4日で10月17日のファイナルステージ第2戦への先発を通告されている。
今季の前田は巨人戦に4回先発して3勝負けなし。防御率0.96、WHIPは0.64と圧倒的な成績を残している。それだけに初戦をとれば一気に連勝を狙えるし、逆に初戦を落としても前田で連敗を阻止したい。そんな監督の願いを込めた起用である。
短期決戦における中4日は、肉体的なダメージはほぼないとみていい。むしろ気持ちが切れずに、前の登板のいいイメージのままにマウンドに上がれるのは、前田にとっては有利といえるかもしれない。
前田はシーズン終盤、9月26日の中日戦で右ひざに打球を受け降板。その後の10月6日のヤクルト戦ではその影響から球が走らず、内容的に不安を残してのポストシーズン突入だった。しかし、阪神とのファーストステージはほぼ完璧な投球内容で、ストレートの走り、変化球の切れも本来に戻っていた。そういう意味では、広島にとってこのファーストステージは、結果的には巨人とのファイナルステージへのいいステップとなった戦いでもあった。