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今年は“小粒”だなんて言わせない!
開幕直前、甲子園の注目選手たち。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/08/07 10:30
甲子園入りし、守備練習で鋭い送球を見せる大阪桐蔭・森友哉。大阪桐蔭も登場する大会初日8日は18歳の誕生日。怪我を負いながらも大阪大会を勝ち抜いたタフガイは、大優勝旗を再度その手にできるのか。
悪いクセがないことは、上位指名のための武器になる。
さて、優勝候補をキリの悪い7校にしたのはそれだけ走攻守3拍子揃ったチームが少ないということである。しかし、超高校級の投手や野手を擁する“一芸名人”的なチームは揃っている。北から順に見ていこう。
チーム打率.408を誇る北照の中でも、3番に座る吉田雄人(中堅手)の安定感は群を抜いている。選抜では準々決勝まで3試合を戦い、通算記録は9打数5安打2盗塁、打率.556。南北海道大会でもチームトップの9安打(打率.429)、7打点、4盗塁を記録し、大会屈指の好打者として名をつらねる。
聖光学院の4番園部聡(一塁手)については選抜時、知り合いのスカウトから「上位候補の1人」と断言された。走守に大きな特徴のない園部が「上位候補」と呼ばれるのはプロ野球界が抱える台所事情、「右の強打者」不足が挙げられる。
しかし、それだけではない。高校生の多くのスラッガーが抱える悪いクセが園部にはない。たとえば、打ちに行くとき体が開くアウトステップ、グリップが下がるヒッチ、バットが下から出るアッパースイング、さらに前さばきの打者が陥りやすいスウェー(前に泳ぐ)や捕手寄りで打とうとすれば体重の後ろ残り。しかし、園部にはそういう悪いクセがなく、通算本塁打も60本に迫っているのである。
打者が存在感を放つ東日本と、投手に逸材が多い西日本。
東高西低が目立つ打撃陣に対して、投手の逸材は西日本に多い。その筆頭に挙げられるのは、広島大会決勝で新庄の左腕・田口麗斗と延長15回0対0の引き分け、再試合でも1対0の投手戦を演じた瀬戸内の本格派右腕・山岡泰輔である。上背は172cmと高くないが、高校生にありがちな悪いクセがない。それでいてストレートの最速は147kmに達し、スライダーで緩急をつける技巧があり、チェンジアップのキレも超高校級。広島大会では7試合、58回3分の1を投げ、奪った三振は64。奪三振率9.87という数字に山岡の凄さが凝縮されている。
有力校が挙がらない九州では、有田工の右腕・古川侑利の評判が高い。佐賀大会では5試合、47回を投げ、イニング数と同じ47個の三振を奪っている。準決勝の佐賀工戦は同じドラフト候補・久保宏剛との投手戦になり、延長10回を完投してチームを勝利に導いている。
東日本勢では前橋育英の2年生、高橋光成に注目が集まる。群馬大会準々決勝の前橋戦、中盤の5回までに3点を取られる苦しい立ち上がりだったが、中盤以降、腕の振りを体の近くで行えるようになり、8回には146、148kmとスピードをどんどん上げていった。
投球テンポが異様に速く、ある打者のときには捕手のボールを受け取ったときから投球モーションを起こすまで1.62秒という短さだった。平均すれば4~5秒。これも高橋の武器の1つである。