詳説日本野球研究BACK NUMBER
若手の台頭が目立つ今季のプロ野球。
もう1つのオールスターで原石を発見!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/07/26 10:31
7月18日のフレッシュオールスター、6回表全イ2死二塁で右越えに先制2ランを放った加藤翔平(ロッテ)。試合後には、パ・リーグ後半戦でのさらなる飛躍を誓った。
二度までも大舞台のデビュー戦でホームランを放つ。
一軍デビューとなった5月12日の楽天戦の初打席、右腕・永井怜が投じた初球の高目チェンジアップを振り抜くと、打球はロッテファンが陣取るQVCマリンフィールドのライトスタンドに吸い込まれた。
私が初めて加藤を見た'09年11月16日の明治神宮大会2回戦でも同じようなことが起こっている。当時上武大学の1年生だった加藤は、関西国際大との試合で1番・中堅手としてスタメン出場するといきなり第1打席、レフトスタンドにホームランを放り込んでいるのだ。一度ならず二度までも大舞台でのデビュー戦、それも第1打席でホームランを放つとはどのような星の下に生まれているのだろうか。青山監督はこの話を聞くと、「彼は持っていますねえ」と唸った。
フレッシュ球宴の放送中もそのエピソードを披露していたら、6回表、戸田亮(オリックス・1年目24歳)が投じた147キロの快速球をライトスタンド上段に放り込んだからさらに驚かされた。第1打席でなかったのが残念だが、小規模といえども全国のファンが注目する晴れ舞台でホームランを打って、MVPを獲得する。けっしてホームラン打者ではないことがさらに空恐ろしく、スター性を十分に備えていると言っていいだろう。
東浜は新人の中でも運動能力が低かった。
ウエスタン・リーグの采配を振るう小川一夫監督(ソフトバンク)には東浜巨(ソフトバンク・1年目23歳)の話を聞いた。小川監督は'10年までソフトバンクのスカウト部長を務めていたこともあり、東浜のことはスカウトとして見ていた時期がある。その小川監督が、「東浜は運動能力を示す数値が新人の中でも低かった」という。
東浜は亜細亜大学1年春からエースとしてチームを背負ってきたので地道なトレーニングにかける時間が少なかったことは事実で、私も気になって亜大3年秋の取材でそのことを聞くと「もどかしいけど、それはそれで受け入れるしかないんで」と話していた。
フレッシュ球宴では全ウエスタンの先発で登板、2回を1安打、無失点に抑えて優秀選手賞に選ばれている。懸案のスピードは142キロが最速で、依然として一軍への道は厳しそうだが、ぎくしゃくした投球フォームが改善されていることは吉兆である。小川監督に「新人は必ずしも即戦力である必要はないですよね」と尋ねると、「いえいえ、東浜にはまだ即戦力の期待を持っていますよ」と、今季中の一軍参戦に依然として期待を寄せているようで、少し驚かされた。