野ボール横丁BACK NUMBER
18歳の躍動と40歳のいぶし銀――。
“らしさ”を取り戻した日本ハムの逆襲。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/06/17 12:20
15日の快勝で、「これでもう一段階、良いほうにいけると思う」とコメントしていた稲葉。チームも自分自身も、これからが正念場となる。
「マエケンを打てれば勢いがつく」(栗山監督)
ゲームが終わった後、栗山は感慨深げだった。
「こういう風に若手、中堅、ベテランがかみ合った試合をやりたいと思っていた。本当にファイターズらしい戦い。こういう試合を生かしていかないといけない」
しかも相手は球界を代表するエース、難攻不落の前田だった。試合前、栗山は「マエケンを打てれば勢いがつく」と話していたが、そういう意味でも価値ある一勝だった。
栗山は言う。
「故障明けだったから100球を超えれば何かあると思っていた。そこまで本気で我慢できた」
どんな内容でも試合後は立ち止まって報道陣の質問に答える前田も、この日は顔を紅潮させ、歩みを止めなかった。そこに敗戦の大きさと、逆にいえば勝利の大きさがうかがえた。
シーズン終了後、今年を振り返ったとき「あの試合がターニングポイントになった」と思い返す試合があるとすれば、それはこの試合になるのではないか。
交流戦が終わってからオールスターまでの期間が重要。
最下位からなかなか抜け出せない日本ハムは、交流戦の最後で、5連勝中と好調の広島とぶつかっていた。15日から札幌で2戦。そして移動日を1日はさんで18日は広島で1戦。
この3試合の意味を栗山はこうとらえていた。
「交流戦が終わって、オールスターまでの二十数試合が中途半端。でも、だからこそうちのようなチームにとってはここが大事。(浮上の)きっかけは必ずくる。それまで必死にやるしかない」
その区切りに近いの試合をこれ以上ない形の勝利で飾った。
効果は翌16日にさっそく表れていた。
開幕からいまひとつ実力を発揮し切れていない先発の武田勝、ストッパーの武田久の「ダブル武田」が万全とは言えないまでも粘投し、この日のクリーンナップ、3番・稲葉、4番・中田、5番・アブレイユがそれぞれタイムリーを放って、3-2で逃げ切った。
広島に連勝し、交流戦の勝ち越しを決定づけた。
また、借金を残り「6」とした栗山はこう前を向いた。
「勝ち越しは最低限の命題だと思っていた。ここまでは、どこに壁があるのかわからなかった。そのジレンマと闘っていた。でも、それがようやく見えてきたし、みんなも同じ思いで戦っていることが確認できた。ここからだと思ってやる」