サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
オーストラリアと引き分けW杯決定!
日本代表の「本田効果」を検証する。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAsami Enomoto
posted2013/06/05 12:35
歓喜のザックジャパン。初めてホームでのW杯出場権獲得となった。
本田が何度も試みた相手を「釣る動き」。
このような変化は、日本代表の攻撃に二つの化学反応をもたらした。
一つは本田が果たす役割である。自陣からボールを運んでいくプロセスが免除され、いきなりアタッキングサードから攻撃をしかけることになった本田は、ボックスに沿ってドリブルをしたり、あえてスピードを緩めながら、ディフェンダーに正面から向かって行くプレーを繰り返すようになる。いわゆる「釣る動き」で敵を引きつけ、味方をフリーにするためだ。
一方、ボランチの遠藤からは「自陣に引きこもった相手を崩すために」足の長いボールがフィードされるようになる。これは相当に興味深い。本来、ミドルレンジやロングレンジのパスは、自陣からカウンターをかける場合に使われることが多いからだ。
ビルドアップが最初から免除されているという特殊な状況下ではあったにせよ、これらのプレーを起点としたチャンスメイクは、かなり見応えがあった。
課題は攻撃ユニット全体でフィニッシュの精度をいかに上げるか。
現在の日本代表では、香川や清武、乾貴士などが、本田や前田遼一、岡崎をはじめとするチームメイトと絡みながら、いかにバイタルエリア周辺で細かなコンビネーションの精度を高めていくかが鍵を握っている。香川と本田を軸とする攻撃陣は、後半8分過ぎ頃からも可能性を感じさせる連係プレーを何度となく披露した。
従来、本田と香川に関しては、プレースタイルや選手としての持ち味などの違いから、噛み合わせがいいのか悪いのか今ひとつ掴みかねるところがあったが、短時間の中であれだけ意思の疎通を図っていくことができたのは、大きな収穫だったように思われる。
対照的に前田はあまり有効な形では絡めなかった。誤解のないように述べておくと、前田はボールのつなぎ役や体を張ったスクリーン、裏への抜け出しといったプレーを精力的にこなしていた。運動量の多さやチームプレーに徹しようとする姿勢も従来通りである。
しかし、いかんせんフィニッシュに至る直前の「崩し方」のアイディアに関しては、まだ周囲と十分に共有しきれていない印象を受けた。香川や本田がさらに深くアイディアを共有し始めた今、前田の能力をどう引き出していくかは、ザッケローニ監督に課せられたテーマの一つだろう。攻撃ユニット全体として、フィニッシュの精度をいかに上げていくかという課題もしかりである。