もはやモウリーニョに残された道はCL制覇以外にない。

　さらにクリスマス休暇明けからは、これまで全く認めてこなかった主力選手の記者会見が毎日行なわれるようになった。

　自身への批判は厭わない反面、世界王者スペインの代表選手達のことはまったく批判しないメディアに対し、「お友達の話が聞きたいならどうぞ」と突然門戸を開いたのである。

　はたしてモウリーニョの意図はどこにあるのか。恐らく彼は、どう転んでもマドリーでの指揮は今季が最後だと悟ったのではないだろうか。

　モウリーニョは結果以外に自身の価値を証明する術を知らない、ある意味で不器用な男だ。

　その彼がリーガで失態を犯した以上、ファンやメディアの不満を鎮めるにはチャンピオンズリーグを制する他ない。

　つまり彼の寿命はCLで敗退した時点で途切れることになる。

後ろ盾のペレス会長を慮って、あえて自分が悪役に!?

　ではもし、デシマ（CL10冠目）を勝ち獲ったら？　

　その時はモウリーニョの方から出て行くだろう。マドリーでやり残した最後の目標であるデシマさえ取れれば、自身のやり方に理解を示さないクラブにこれ以上とどまる理由など彼にはないからだ。

　2年前に右腕のバルダーノを切った時点で、会長のフロレンティーノ・ペレスはモウリーニョとの心中を覚悟した。しかも他に後任に相応しい人材も見当たらない現状、ペレスがモウリーニョを切るには相当な理由が必要になるはずだ。また昨年妻を亡くしたばかりのペレスは、来夏に控える会長選挙への出馬さえ逡巡するほど精神的に疲弊しているとも聞く。

　ゆえにモウリーニョは、CLで負けた時点でペレスが自身の解任を決断できるよう、あえてファンとメディアの憎しみを煽っているように見えるのだ。

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