スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
CL制覇で勇退か、敗退で解任か──。
勝利至上主義者モウリーニョの落日。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima/AFLO
posted2013/01/23 10:31
1月15日の国王杯バレンシア戦後には、エースのC・ロナウドとも口論があったと伝えられたモウリーニョ。
シーズン前半戦を終えた時点で11勝4分4敗の3位。早くも首位バルセロナに勝ち点18差、2位アトレティコ・マドリーにまで同7差をつけられるなど、今季のレアル・マドリーは予想外の不振に苦しんでいる。
ピッチではモウリーニョサッカーのベースであるべきインテンシティ(=プレーのスピードと激しさ)の低下に加え、攻めては最大の武器である高い決定力が陰りを見せ、守ってはセットプレーからの失点が増えている。
史上初の勝ち点100を積み上げた昨季とほとんどメンバーが変わっていないにもかかわらず、今までできていたことが、なぜできなくなったのか。
それは4年ぶりのリーグ優勝により選手達に生じた気の緩みと考えることもできるが、それ以上に3シーズン目を迎えたモウリーニョの指導スタイルが直面した限界にあるように思える。
なぜモウリーニョのチームは短期間しかもたないのか。
ジョゼップ・グアルディオラはバルセロナでしか勝てないが、モウリーニョはどのチームでも勝てる――。
両指揮官が国内外でしのぎを削ってきたここ数年、そんな意見をよく耳にしてきた。だが、こうも言えはしないだろうか。グアルディオラは1つのチームを勝たせ続けることができるが、モウリーニョのチームは短期間しかもたない、と。
モウリーニョのチームは必ず就任直後にタイトルを獲得するが、その後はパフォーマンスが低下していく傾向がある。
ポルトでは就任から2年半でチャンピオンズリーグを制したが、チェルシーとインテル、そして今季のマドリーにはそのパターンが当てはまる。自身の目的を全うするためには敵、味方を問わず容赦なく叩き、メディアも使って執拗にプレッシャーをかけていく彼のやり方は、周囲に多大なストレスと消耗をもたらすからだ。
特にマドリーでは、次々と敵を作り出すその攻撃的な性格により、クラブが100年以上かけて培ってきた「紳士のクラブ」というイメージを著しく傷つけてきた。そのようなやり方に対する不満に加え、3年目を迎えた今季はさらに、モウリーニョの指導力に対する疑問も選手達の間で増してきている。