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巨人優勝の“陰のMVP”はこの男!
ピンチをことごとく救った西村健太朗。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShigeki Yamamoto
posted2012/09/24 15:00
日本人投手の球団セーブ記録である32セーブ(上原浩治)を超えるか? 「師匠(レンジャーズの上原)も経験していない胴上げ投手になるなんて。セーブ数も、挑戦していいですかね」と優勝試合後にコメントした西村。
クルーンから山口、久保と続いた抑えの懸案事項。
常に巨人の“懸案”は抑え問題だった。
2008年から3年間は開幕からマーク・クルーンがその役割を担ったが、最後の年の終盤にはその神通力もすっかり通じなくなっていた。そして昨年は一度は山口鉄也投手を抜擢したもののうまくいかず、最終的には久保裕也投手が20セーブをマークする安定した力を見せて、ようやく“懸案”は解消されたかに思えた。
だが、だ。
昨オフに股関節の手術を受け、開幕には何とか間に合った久保を、今度は違うアクシデントが襲った。右ひじの故障から開幕2試合に登板しただけで戦線離脱、そのままトミージョン手術を受けることになったのだ。
そこで急遽、代役に指名されたのが西村だったのだ。
“ちょっと器用貧乏”で、正当な評価を得られないでいた西村。
広島・広陵高から'03年のドラフト2位で入団した右腕は、ここ数年は先発の穴を埋めながら中継ぎもこなす投手陣のユーティリティー的存在として重宝されてきた。
140キロを少し上回るストレートにスライダーとフォーク、そして右打者にとっては懐をえぐって鋭く食い込むシュートが嫌な投手だが、その一方で、決して闘志をむき出しにして打者に向かっていくようなタイプではない。
そのちょっと器用貧乏そうなところが、投手としては“定職”につけない理由になっていたかもしれない。その結果、「困ったときの西村」として、首脳陣の間でも、それはそれで貴重な存在として扱われてきてしまったきらいがあった。
そして今年もまたまた、守護神不在というピンチに「困ったときの西村」の登場だった。
4月1日のヤクルト戦の9回にクローザー登板して初セーブを挙げると4月だけで5セーブをマーク。その後も急造守護神とは思えない安定感で、巨人投手陣の唯一、欠けていたピースを埋めてくれたのである。