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巨人優勝の“陰のMVP”はこの男!
ピンチをことごとく救った西村健太朗。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShigeki Yamamoto
posted2012/09/24 15:00
日本人投手の球団セーブ記録である32セーブ(上原浩治)を超えるか? 「師匠(レンジャーズの上原)も経験していない胴上げ投手になるなんて。セーブ数も、挑戦していいですかね」と優勝試合後にコメントした西村。
何ともあっけないフィナーレだった。
巨人が優勝へのマジック「1」で迎えた9月21日のヤクルト戦。胴上げにあとアウト1つとなって打席には、ヤクルトの2番打者・田中浩康内野手が立っていた。
カウント2ボール1ストライクからの4球目。マウンドの西村健太朗投手の鋭い変化球に田中のバットが空を切った瞬間だ。
エンドランがかかっていたのか。一塁走者の雄平外野手が一、二塁間に大きく飛び出して、オロオロしている。
「エッ、ナニ?」
西村の顔が一瞬、狐につままれたようになった。阿部慎之助捕手が慌てて一塁にボールを投げてタッチアウト。あっけない、しかも予想外のゲームセットに、ほんの一瞬、歓喜が爆発するのに間があった。
3年ぶりの覇権奪回。ナインの手で8度、宙に舞った原辰徳監督の優勝監督インタビューは、まずファンへのこんな言葉で始まった。
「ここにいらっしゃるファンの皆さんのおかげです。選手を、チームを代表して、一言、御礼申し上げます。優勝、おめでとうございます!」
杉内、ホールトン、村田、そして阿部とヒーローは多いが……。
ぶっちぎりだった。
優勝を決めた時点で2位の中日も貯金は「21」あった。それをはるかに上回る貯金「43」。圧倒的な強さを見せての独走だ。
勝因は、いくつか挙げられる。
杉内俊哉、DJホールトン両投手の補強の成功。極度に守備力の低かったアレックス・ラミレス外野手を切り、昨年固定できなかった三塁に村田修一内野手を獲得したことによるディフェンス面での強化。そして攻守にチームを引っ張ったキャプテン阿部の活躍……。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが、今年の巨人はクローザーの失敗がほとんどなかったということだ。