プレミアリーグの時間BACK NUMBER
勝ち試合を落とす“優勝争い初心者”、
トッテナムに立ちふさがる二強の壁。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/02/02 10:30
爆発的なドリブルでタッチライン際を蹂躙するギャレス・ベイル。今季は崩しだけでなくフィニッシュの精度も向上し、世界屈指のサイドアタッカーに成長した
敗戦で明白になった頼れるCFと決定力あるFWの必要性。
対照的にトッテナムが評価を下げた2試合では、指摘されて久しい、頼れるCF不在の深刻さも明らかだった。マンC戦では、レンタル元が相手ということで、エマニュエル・アデバヨールの起用不可を嘆く声もあった。たしかに、新FWのリーグ戦19試合9得点という数字は上々だが、マンCの「不用品」の穴が目立つような事態は、優勝候補にはあってはならない。アデバヨールが、エースと呼ぶには心許ない人材であることは、大事なウルブズ戦で全く精彩を欠いた事実が物語る。
残るFW陣の中で、ラファエル・ファンデルファールトはチャンスメイクを好み、ロマン・パブリュチェンコは指揮官の信頼が薄いことから、フィニッシャーとしての次点は、最後の一皮が剥け切れないジャーメイン・デフォーとなる。先発したマンC戦では、敵のクリアミスをついてゴールを決めたデフォーだが、それ以外にも決めているべきチャンスは数回あった。極めつけは、ベイルのクロスに合わせ切れなかった後半ロスタイムの一場面。定石と思われた弾道の低いクロスを予期していれば、伸ばした右足は確実にボールを捉えてネットを揺らし、チームに1ポイントをもたらしていたはずだ。
経験値不足の“優勝争い初心者”には3位が妥当!?
トッテナムが進歩していることは間違いない。
CLによる疲労が危惧されるチェルシーとアーセナルとは違い、国内での順位争いに注力できるアドバンテージもある。レドナップ監督も、「優勝は不可能ではない」とのスタンスを崩していないし、選手からプラスアルファの力を引き出すその手綱捌きは、プレミアでもピカ一だ。16試合を残しての8ポイントという首位との差も、理論上は挽回不可能なものではない。
とはいえ、終盤のデッドヒートを走りぬく決定力と経験値に欠ける“優勝争い初心者”は、3位争いの最右翼として扱うのが妥当だろう。
近いようで遠いトッテナムのリーグ優勝。そう思えてならない。