日本代表、2010年への旅BACK NUMBER

大人から紳士へ──。
プロ10年目にして覚醒した石川直宏。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2009/07/29 11:30

大人から紳士へ──。プロ10年目にして覚醒した石川直宏。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

第18節終了時点で2位タイの10得点を挙げている石川直宏。ペナルティエリア外からも積極的にゴールを狙う

サッカーで重要なのはフィジカルよりも経験。

 28歳といえば、サッカー界では決して若くはない。あと2年もすれば、「ベテラン」と呼ばれてしまう範疇に顔を突っ込むことになる年齢だ。石川直宏の覚醒もさることながら、今の日本サッカー界を見渡してみると、円熟期に入ったプレイヤーたちの“再ブレイク”が目につく。

 ジーコジャパン以降、代表ユニホームに袖を通していない小笠原満男の充実ぶりには特に目を見張るものがある。'07年にメッシーナから鹿島アントラーズに復帰してからコンスタントに活躍しており、磨きをかけた守備力、試合の流れを見ながらの絶妙な手綱さばきなどを見るにつけ、30歳を迎えてなお成長していることを感じさせてくれる。鹿島の独走に、小笠原の充実は外せない要素だ。

 また、J2の得点王争いで主役に躍り出ている東京ヴェルディの大黒将志も、その一人だろう。相手を外して裏に飛び出す動きは、さびるどころか鋭さを増しているような印象さえ抱かせる。

 ふと、前回のドイツW杯の前に中村俊輔から聞いた話を思い出した。

「(選手というのは)29、30、31歳ぐらいが一番いいんじゃないかなって思っている。ちょっと動けなくなったといっても、経験や試合を読む目、それに多くなった引き出しがあるから。少々動けなくなることなんて、大したことじゃないと思うよ」

サッカーの奥深さを知った石川。代表入りの目はある。

 南アフリカW杯まであと1年。今の代表メンバーがベースになるとはいえ、メンバー争いは秋以降、ますます激しくなることだろう。10月のスケジュールはタイトになる。8日にアジアカップ予選、香港戦(ホーム)をこなして中1日でスコットランドとの親善試合を行ない、中3日でトーゴ戦が待っている。となれば、9月のオランダ遠征を含めて代表候補の枠が拡がることも予想され、好調を維持していけば石川にもチャンスが出てくるはずだ。

 岡田武史監督は、香川真司、山田直輝など若い選手を積極的に抜擢してきた。もちろん伸びしろを考えるなら、才能ある若手にチャンスを与えるのは当然のことではある。'98年のフランスW杯のとき、指揮官が中村俊輔、小野伸二、柳沢敦、市川大祐の才能を早くから見い出し、小野を本大会のメンバーに選出した前例を考えれば、今後も新たな若い才能の発掘に力を入れていくに違いない。

 だが、そんな指揮官がよく口にするイングランドのことわざがある。

「サッカーは子供を大人にし、大人を紳士にする」

 28歳の石川は、まさに大人から紳士に向かおうとしている時期と言えなくもない。

 サッカーの奥深さを理解してきた「紳士」の予備軍にも、しっかりと目を配ってもらいたい、と願うばかりだ。

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