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モーグルの新女王・上村愛子 「人は出会いで強くなれる」 ~特集:バンクーバーに挑む~
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2009/12/03 10:30
バンクーバーでの金メダルのために、4月から早くも始動。
二つの出会いを経て、上村は変わった。
それが'07-'08年シーズンのワールドカップ総合優勝と、'09年3月の世界選手権2冠という結果に結びついた。
出会いには運もあったかもしれない。だが出会いを引き寄せ、さまざまなことを二人から学ぶことができたのは、理想の滑りを追い求めた試行錯誤の日々があったからにほかならない。その土台がなければ、二人から吸収することもなかっただろう。
来年2月にはバンクーバー五輪が控えている。五輪代表に全競技中、一番乗りで内定した上村は準備に余念がない。
「こんなに早く雪上で練習したことは今までなかったですね」
と言うように、上村は昨シーズンが終了してひと月後の4月には早くも海外に出て雪上での練習に励み、その後も猪苗代や海外で合宿を重ねている。すべてはバンクーバー五輪で結果を出すためにほかならない。
自分の滑りに絶対の自信をもつ今、オリンピックでの目標も明確だ。
「ジャッジの人も、観戦に来ている人も、きっとカナダの人が多いんだろうなあとは思うんですけど、みんなが『ああっ!』と驚いてくれる、『愛子いい滑りしたなあ』と思ってくれる滑りをしたいですね。圧倒的な滑りをしたら絶対に勝てるじゃないですか。だからそこまでもっていくのが理想ですね」
開催国のカナダには、トリノ五輪金メダルのジェニファー・ハイルがいる。彼女ばかりでなく、他の国にもライバルとなるであろう選手はいる。
決して楽な戦いにはならない。オリンピックが近づけば近づくほど、緊張に襲われることもあるに違いない。だが、これまでとは違う対処ができるはずだ。
「体調面では万全で臨みたいし、いきなりうまくなったり、ジャンプアップはできないから、しっかり、今までと変わらない気持ちで取り組みたいですね」
その日まで、上村は一日一日、地道に練習に励む。
上村愛子(うえむらあいこ)
1979年12月9日、兵庫県生まれ。白馬高校を経て北野建設入社。4歳でスキーを始め、中学2年のときアルペンからモーグルに転向。'98年、長野五輪に出場して7位入賞。'02年ソルトレイク五輪で6位。'06年トリノ五輪は5位。'07-'08年シーズンのW杯で初の総合優勝。W杯通算9勝。'09年3月の世界選手権では2冠に輝く。156cm、50kg