1964(昭和39)年の東京オリンピックでは、文学者たちがこぞって新聞・雑誌に原稿を寄せた。戦後はじめての大イベント、文士たちも総動員されたのであろう。観戦記や随筆を集めたのが本書である。
スポーツと五輪への関心の度合いはそれぞれで、「無関心派」(菊村到)「落第」(阿川弘之)「さっぱり興味がない」(瀬戸内晴美=寂聴)「オリンピックはオリンピック、それだけのこと!」(大江健三郎)……など、ネガティブ派も多いのであるが、それなりに読ませるのは物書きの技であろう。
三島由紀夫は関心派といっていいのだろう、陸上、水泳、ボクシング、重量挙げ……など、10本以上の観戦記を寄せている。男子陸上100mの覇者、ボブ・ヘイズの圧倒的な走りに対しては「彼は空間の壁抜けをやってのけたのだ」と形容している。
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