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「深まった“混沌”への理解」福岡堅樹によるスコットランド戦の《傑作トライ》はいかに生まれたか?【連載・桜の真実2019 第3回】
ジェイミージャパンに上昇の兆しが見られたのは、2018年11月17日に行われたイングランド戦だった。
その2週間前、ジャパンは味の素スタジアムでオールブラックスに完敗したものの、イングランドに渡ってからの時間で、急速に成長していた。試合が始まり、エディー・ジョーンズ率いるイングランドに一歩もヒケを取らない。
主将のリーチマイケルはこの試合で、おそらくは選手生活で最高のパフォーマンスを見せる。フェイズが進む中で本来はウイングが位置する大外で待ち、ここで大きなゲインを見せた。前半は15対10とリード。聖地トゥイッケナムの観客は狐につままれたようだったが、後半になってイングランドが意地を見せる。結局、日本は15対35で敗れたものの、リーチは自信を深めた。
これなら、W杯でアイルランドとスコットランドに勝てる。トゥイッケナムでこれだけの試合ができたのだから、俺たちは、もっともっと強くなれる――。
指揮官ジェイミー・ジョセフもイングランド戦のパフォーマンスに手応えを感じながらも、'19年2月からスタートする長期合宿では、ケガのリスクを恐れずに強靭な肉体を作り上げ、戦術の理解度をさらに深める必要性を感じていた。
そして2月から6月にかけ、選手たちは「アンストラクチャー」への理解度を急速に高めていた。
ジェイミーがメディアにこのプランのコンセプトを懇切丁寧に説明することはなかったため、マスコミは「アンストラクチャー=混沌状態」と表現するしかなかった。メディアの理解は、日本がキックによってボール保持の行方がどちらに転ぶか分からない状況を作り出し、その局面で積極的な防御から好機を見出す―と解釈するしかなかった。そこには「ボールを放棄し、むざむざ相手に渡す必要があるのか?」という疑問も含まれていたが、ジェイミーは「メディアはまったく理解していない」と歯牙にもかけなかった。
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