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《サイレンススズカへ》柴田善臣とオフサイドトラップ、27年目の告白「自分の思いを伝えなければ一生、負い目を感じる」【1998年天皇賞・秋の勝利と後悔】
数々の名勝負が繰り広げられてきた天皇賞・秋だが、そのスリリングな展開でファンを沸かせた一戦といえば、2022年のレースを思い浮かべる人も多いのではないか。勝ったイクイノックスが主役なら、名脇役としてレースを盛り上げたのは2着のパンサラッサ。1000m通過57秒4という超ハイペースで大逃げを打つと、ゴール寸前まで粘りに粘ってみせた。
レース後にはパンサラッサもイクイノックスと同じくらいに話題を集め、讃えられた。その理由のひとつに前出のラップがあった。57秒4というのは、1998年の天皇賞・秋でサイレンススズカが刻んだラップと寸分違わぬ数字だったから。サイレンススズカは直後の3-4コーナー半ばで競走を中止したが、その“夢の続き”をパンサラッサに重ねたファンも少なくなかった。
コンビを組めると聞いた時はうれしかった。
こうしてレースから四半世紀が過ぎた今でもたびたび話題にのぼる'98年の天皇賞・秋。しかし主語として語られるのはサイレンススズカばかりで、本来主役であったはずの勝ち馬・オフサイドトラップの名前が挙がることは少ない。8歳での天皇賞制覇は史上初。なおかつ屈腱炎と戦いながらのGI勝利は紛れもない偉業であるにもかかわらず、である。手綱を取った柴田善臣は、そのことをどう感じているのか。あの一戦を振り返ってもらった。
「オフサイドトラップに乗ったのは、あのレースが最初で最後。確かマサヨシ(主戦の蛯名正義)に別の乗り馬がいて、代打で頼まれたのかな。声をかけてもらった時は素直にうれしかった。なにせ天皇賞・秋に出られるんだから。それも重賞連勝中で勢いがある、チャンスのある馬でね。オフサイドの強さは、その前走・新潟記念で対戦して肌で感じていた。自分はブラボーグリーンという馬に乗っていて、1番人気のオフサイドを負かしてやろうと思って乗ってたの。レースでも思い通り完璧に乗れたんだけど、結果はハナ差の2着。“これでも負けるのか”と落胆したけど、同時にオフサイドの強さを改めて感じた。だからコンビを組めると聞いた時はうれしかったし、脚元の悪い馬だったけど、厩務員さんからもすごくいい状態と聞いていたから楽しみだったよね」
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