東京オリンピックから半世紀後、さまざまな関係者の追想をまとめたのが本書である。著者は中日新聞(東京新聞)で五輪取材を重ねた元運動部長。
登場人物には、メダリストたち、メダルには及ばなかった選手たち、最終聖火ランナー、スターター、選手村の女性理容師、カメラマン……などがいる。
開会式の「第一日」から閉会式の「第十五日」まで、それぞれの「一日」を章立てとし、登場人物の弟子や肉親を含め、その肉声を通して東京オリンピックとは何であったのか――を検証している。知られざる逸話の発掘が興味深い。4年前のローマ五輪、ホッケーチームは強豪パキスタンに0-10で惨敗した。東京では0-1。勝てはしなかったが、屈辱は払拭した。後年、会社勤めを経て故郷・広島でお好み焼き屋を開いた山岡敏彦は、折々、「わしは昔、東京オリンピックに出とるんじゃ」という遠い記憶をかみしめる。
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