#1107
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「僕は“あの人”になりたい」横山和生が語る父・横山典弘の「殺気を感じた」レースとは?《四位洋文も「ノリちゃんの神騎乗」について証言》

2024/10/25
今年はダノンデサイルで最年長ダービージョッキーとなった横山典弘
想像を超えるレースを作り上げる彼の感性はファンのみならず、同業者たちをも虜にする。その情熱を最も近くで見てきた長男の和生が、目標とする“あの人”の流儀を明らかにする。(原題:[妙技の実相]横山典弘が伝えた騎手の本懐)

 横山典弘騎手が美浦から栗東に拠点を移してから3年が経った。騎手生活にマンネリを感じた横山が、いつまでと決めたわけではなく、「ちょっと栗東を覗いてくるわ」と軽く行動を起こしたのが始まりだった。当面の生活用品を愛車に積み、たまたま栗東に行く用事があった長男の和生騎手に運転を任せての高速道路を乗り継ぐ旅。途中、渋滞に巻き込まれて9時間弱もかかったそうだが、和生は「お父さんとずっと競馬の話をしていたので長いとは少しも感じませんでした。楽しくて、あっという間でしたよ」と、その日を振り返る。和生の口から不意に発せられた「お父さん」の響きは、聞いているこちらまで心地よくなるもので、理想の父子関係がそれだけで想像できてしまった。

「子育てなんか、全くしてこなかったよ……」と、横山があえて寂しそうな口調で言うのは、所帯を持った和生が二児をもうけ、毎日を家族と一緒に楽しそうに過ごしている様子が少し羨ましく見えるかららしい。「和生のような人生も、いいものなんだなと思えるようになったってことだな」と、このときだけは、孫が可愛くて仕方がない56歳の顔になっていた。

競馬のことだけをずっと考えて生きてきた。

「毎日毎日、起きている間は競馬のことだけをずっと考えて生きてきた」と横山は言う。

「酒を飲むこと、ゴルフをすること。どっちも俺にとっては週末の競馬を迎えるための早送りボタンのようなものさ」は、特に印象に残る横山から聞いた言葉だが、それとワンセットで想像してみると、彼のあまりにもストイックな競馬への向き合い方がわかってくる。

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photograph by Photostud

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