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『東京にオリンピックを呼んだ男』 五輪招致で戦後日本に希望を 与えた無私の日系人の生涯。

2020/02/26

 1988年秋のこと。ロサンゼルスに滞在した時期があり、たまたまであるが、日系人のための老人ホームの改築にかかわる集いに出席し、主催者のフレッド・和田勇と会った。白髪の品のいい老紳士であったが、「八百屋の親父ですよ」と自己紹介したと記憶する。

 和田を、1964(昭和39)年東京オリンピックの招致に尽力した一人と耳にしていたが、五輪、八百屋、老人ホーム……がつながったのは、ノンフィクション・ノベルというべき本書を手にしてからである。

 和田は米国生まれの二世だが、少年期、両親の故郷・和歌山の漁村で暮らした。渡米後は野菜・果物の小売業に携わるが、「パールハーバー」が勃発、敵国民となる。日本とアメリカ、共に「敗けてもらいたくなかった」と述懐している。

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photograph by Sports Graphic Number

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