1988年秋のこと。ロサンゼルスに滞在した時期があり、たまたまであるが、日系人のための老人ホームの改築にかかわる集いに出席し、主催者のフレッド・和田勇と会った。白髪の品のいい老紳士であったが、「八百屋の親父ですよ」と自己紹介したと記憶する。
和田を、1964(昭和39)年東京オリンピックの招致に尽力した一人と耳にしていたが、五輪、八百屋、老人ホーム……がつながったのは、ノンフィクション・ノベルというべき本書を手にしてからである。
和田は米国生まれの二世だが、少年期、両親の故郷・和歌山の漁村で暮らした。渡米後は野菜・果物の小売業に携わるが、「パールハーバー」が勃発、敵国民となる。日本とアメリカ、共に「敗けてもらいたくなかった」と述懐している。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Sports Graphic Number