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大学部活は門前払い→一般企業に就職でも…高校で全国制覇の女子ラグビー選手が“業界初のプロ宣言”をしたワケは?「今しかできないことに全力を…と」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph by(L)Shigeki Yamamoto、(R)Nobuhiko Otomo

posted2025/11/23 11:01

大学部活は門前払い→一般企業に就職でも…高校で全国制覇の女子ラグビー選手が“業界初のプロ宣言”をしたワケは?「今しかできないことに全力を…と」<Number Web> photograph by (L)Shigeki Yamamoto、(R)Nobuhiko Otomo

慶大時代は大学の部活に入れず、クラブチームでの活動を続けた青木蘭さん。卒業後はケガもあり競技から離れることも考えたが、一転「プロ宣言」をすることに

――蘭さん自身、大学を卒業するとチーム運営の母体でもある横河電機に就職しました。

青木 アルテミ・スターズに加わったのは大学3年の終わりごろ、ちょうど、就職活動を始める時期でした。アルテミ・スターズのメインスポンサーである横河電機は武蔵野市に本社がある、プラントの制御事業を主軸としたグローバル企業です。「良き市民であり、勇気を持った開拓者であれ」という企業理念、事業を通じた社会貢献に積極的に取り組んでいる企業姿勢に強いあこがれを抱きました。私は慶応大学の総合政策学部で、人が困難に直面した時に発揮される「ライフスキル」を研究テーマにしていて、インターンでは銀座の街づくり事業に参加した経験もあり、その経験も活かせると思いました。

 コネとは思われたくなかったので、アルテミ・スターズでラグビーをしていることは言わず、一般学生として面接を受けたのですが、運よく採用していただけました。入社は2019年です。ブランドプロモーション部に配属されて、社内広報誌の編集や採用広告の担当など、コミュニケーションにまつわる業務に従事しながらアルテミ・スターズでのプレーを続けました。自分が興味を持って、ワクワクできる仕事をしながらラグビーにも打ち込む生活は充実していました。ただ、1年目のシーズンに、左ひざ前十字靭帯断裂という重傷を負ってしまいました。

大ケガで1年半のリハビリ…「やめるタイミングかな」

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――選手生命に関わるような大きなケガでした。

青木 それまでのラグビー人生で一番大きなケガでした。ケガをしてからリハビリ生活は1年半も続きました。しかもリハビリで競技を離れている間に、コロナ禍が来たんです。ラグビーができない。職場にも行けない。仲間に会えない。ラグビーがいつ再開できるのかもわからない。リハビリを続けてもその先の出口が見えない。モチベーションがわいてこない。これは現役をやめるタイミングかな――そんな思いも頭をかすめました。

――それでもやめなかった。

青木 そのころ、ちょうど今の夫の一輝と交際していたんです。一輝は社会人チームでラグビーをプレーしていたけれど、やはりコロナで練習できない。二人で連日、仕事帰りに公園に出かけてパスを投げ合いました。一輝のパスは女子選手よりも速くて強いから、そのパスを捕って、私も強いパスを投げ返しているうちに、パスがうまくなっていく実感がありました。

【次ページ】 転機となったのは「東京オリンピック」

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