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大学部活は門前払い→一般企業に就職でも…高校で全国制覇の女子ラグビー選手が“業界初のプロ宣言”をしたワケは?「今しかできないことに全力を…と」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph by(L)Shigeki Yamamoto、(R)Nobuhiko Otomo

posted2025/11/23 11:01

大学部活は門前払い→一般企業に就職でも…高校で全国制覇の女子ラグビー選手が“業界初のプロ宣言”をしたワケは?「今しかできないことに全力を…と」<Number Web> photograph by (L)Shigeki Yamamoto、(R)Nobuhiko Otomo

慶大時代は大学の部活に入れず、クラブチームでの活動を続けた青木蘭さん。卒業後はケガもあり競技から離れることも考えたが、一転「プロ宣言」をすることに

――この時期は毎年のように慶大に女子ラグビー選手が加わりました。1年後には2017年ワールドカップに出場することになるFWの塩崎優衣が都立青山から、母校の石見智翠館からは2022年、25年のワールドカップに出場することになるFWの佐藤優奈が2年後に、3年後には2021年東京、24年パリの五輪2大会に出場するWTBの原わか花が入学しました。

青木 部員集めも相当頑張ったし、もう少しで7人揃うかな、単独チームでエントリーできるかな、というところまで行ったんですが、そこから先へはなかなか進みませんでした。体育会の運動部として承認されるには、非公認サークルから始めて10年くらいかかるというし、そもそも顧問を引き受けてくれる先生が見つかりませんでした。そのうちに、私のキャパシティを超えてしまった。

 大学では部に入れませんでしたが、代わりにプレーしていたクラブチーム(東京フェニックス)でも選手が増えて、チーム内のレギュラー争いも激しくなっていて。私も負けるもんかと頑張りすぎて、熱中症で倒れて、救急車で搬送されたことも何度かありました。そんなことがあって、大学3年の夏に、少しクラブチームを離れよう、休部させてもらおうと思ったのですが、結局、そのまま退部になってしまいました。それ以降は慶応の女子ラグビー部構想も棚上げみたいになってしまいました。

大学3年時から別の「新興クラブチーム」へ

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――でも、ラグビーを離れることはできなかったのですね。

青木 大学3年の10月から1月までの間はチームに所属せず、1人でトレーニングをする生活をしていました。そのころ、クラブチームの元トレーナーの方から「東京で新しいチームができたよ、興味ない?」と紹介されて、12月だったかな? できたばかりの横河武蔵野アルテミ・スターズというクラブチームの練習を見学に行きました。

 そこで、ヘッドコーチのスティーブ・タイナマンに挨拶したとき「ラグビーをうまくなるために必要なのはなんだと思う?」と聞かれて、私は「めちゃめちゃ練習すること、ラグビーに全部の時間を捧げることだと思う」と答えたんです。するとスティーブは「それも大事だけど、他に大切なことが3つある。それは家族、友人、恋人との時間を大切にすること。ラグビーを上手くなるには、人生をラグビーに捧げるんじゃなく、ラグビーを使って人生を楽しむことが大切なんだ」と言ったんです。その言葉を聞いて衝撃を受けて、「このチームでやりたい!」と思ったんです。

――新しくできたばかりのチームでした。

青木 新しいチームですが、スティーブの考え方も影響していたと思うのですが、プライベートの充実を大切にするチーム文化が育っていました。私がそれまでかかわったチームでは、芸能事務所みたいに「恋愛禁止」と言われたりしたのですが、アルテミ・スターズではむしろ「恋愛奨励」。

 チームメイトも、パートナーがいたり、結婚後もプレーを続けた選手もたくさんいます。そんなチームが、設立3年目には全国女子選手権で優勝しちゃったんです。すごくないですか?

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