大谷翔平に4年ぶりのLINE「久しぶり、覚えてる？」その返事とは？ 高校日本代表の同僚・大谷に“ある相談”、岡野祐一郎が中日のドラフト指名を受けるまで 

　岡野の成長するペースはいつだって一段一段だった。それこそが岡野の強みだった。「一気に」は無理だが、「一段ずつ」なら自分の努力次第でクリアできることを知っていた。

　岡野は藤浪や大谷を目の当たりにしても、あきらめるのではなく、まずは目の前の一段に足をかけることを選んだ。

大谷にLINE「久しぶり、覚えてる？」

　青山学院大に入学した後、岡野は1年春から登板機会を与えられる。そして2年春からは早くもエースの座を射止めた。しかし、そこからは勝ったり負けたりを繰り返し、2年秋には二部降格も味わっている。

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「大学で一度、静かに投げるようになったんです。でも途中から、やっぱり高校時代みたいに吠えた方がいいかなと思って、大学でもちょっと吠えた時期がありました。抑えたときだけですけど」

　球速は147キロまで上がったが、まだプロの世界は見えてこなかった。

　大学4年生のとき、プロ野球の世界で投打の二刀流に挑む大谷は自分よりはるかに大きな歩幅で階段を駆け上がっていた。そこまでは、どちらかというと投手力が先行していたが、プロ4年目は10勝を挙げただけでなく、ホームランを一気に22本まで伸ばし、いよいよ二刀流という方向性がファンタジーでなく、現実に有り得るスタイルであることを証明しつつあった。

　岡野はこう打ち明ける。

「大学のときは、ちょっと大谷君のことをイメージして投げたりしてましたね」

　一気に差が広がったことを実感していた頃だったからか、このときばかりは岡野は大谷を「君」付けで呼んだ。

　岡野が携帯をいじって、2016年当時のメモを探し出す。

「……暇さえあれば携帯に何かメモしてるので。自分の言葉なのでわかりにくいかもしれませんが〈ゆっくり足上げた方が。上げたまま沈む。そこから地を這う大谷のイメージ〉。たぶん、足を上げてスッと行くんじゃなくて、沈み込んでぐぐっと行くような感じをイメージしたかったんでしょうね。この頃は大谷君のことを教材として見てましたね」

　画面を通して観ているだけではなかった。大学時代、岡野は一度だけ大谷に直接質問したことがある。

「僕が大学4年生のとき、大谷君は日本シリーズに出ているんです。あの頃、ダルビッシュさんと一緒にトレーニングをしたりしていて、すごく体がでかくなっていた。なんでだろ？　と思ったんです。そうしたら試合中、変な色のドリンクを飲んでいたので、自分なりに調べてみてだいたいわかったんです。でも、それをどうしても本人に確認したくて」

　高校日本代表で一緒になったとき、岡野は大谷とLINEの連絡先を教え合っていた。ただ、一度も連絡したことはなかった。

「無視されたら恥ずかしいなと思ったんですけど、知りたいという気持ちが強過ぎて。返ってくるかわからないですけど、一か八か送ってみたんです。僕からしたら、かなり思い切りました。大谷君が打ったあとの試合だったので『ナイスバッティング』『久しぶり。覚えてる？』みたいなことから入りつつ、『あの飲み物、何？』って。そうしたらすぐに返ってきました。けっこう詳しく教えてくれましたね。けど、それよりも深いことを聞こうとしたら、ダルビッシュさんもお金をかけて専門の人を雇っているのでそこまでは教えられないみたいな感じで。ただ、飲み物だけは確認できました。最後に『また聞きたいことあったら教えてね』って送って、『いつでも』みたいな感じで終わりました」

　岡野が大谷を頼ったのは、それが最初で最後だった。

＜続く＞

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ある球団スカウト「4位までには指名するよ」が裏切られ……続きでは、岡野祐一郎のドラフトウラ話を綴る。

#2に続く

ある球団スカウト「4位までには指名するよ」が裏切られ…まさかの“ドラフト指名漏れ”、元中日・岡野祐一郎が明かす「ドラゴンズ3位指名、1年前のドラフトウラ話」