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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
伊藤大海の沢村賞選出は“2年連続該当なし”を回避か「200→180回、10→8完投」基準をさらに見直して、先発完投型にこだわらなくても
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/11/12 11:00
日本ハムの伊藤大海が2025年の沢村賞に輝いた
今年の日本ハムは、新庄監督が先発投手を完投させる方針を持っていた。日本ハムの23完投は、12球団ダントツ。2位は広島の11完投だった。この方針がなければ、伊藤の投球回数、完投数はもっと少なかっただろう。
端的に言って、今季もっとも優秀な先発は、防御率1.46、167回を投げて12勝3敗を記録したソフトバンクのモイネロだった。ポストシーズンでもモイネロは3試合20回を投げて2勝、自責点2、防御率0.90と圧倒的だった。
基準が200→180回、10→8完投になるが…
沢村賞選考委員会の堀内恒夫委員長は「中継ぎ、抑えと分業化が進み、先発投手が最後まで投げ切る機会も減少している。時代の流れがある。現行の基準では達成が著しく困難な状況であるのは明らか」として、投球回数を来年度から200回→180回、完投数を10完投→8完投にすると発表した。
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しかし今後は量的な指標ではなく、質的な指標を重視すべきではないか。
MLBで最も優秀な投手に与えられるサイ・ヤング賞は、1956年に制定された。当初は沢村賞と同様、投球回数や奪三振数を重視していたが、近年はセイバーメトリクス的な指標を重視。また、救援投手も選考対象にしている。沢村賞も「先発完投」にこだわらず「そのシーズンで最も優秀な投手に授与する」というコンセプトに変化する時勢に差し掛かっていると感じる。
米球界のサイ・ヤング賞は、沢村賞3度受賞の山本由伸が最終候補に残っている。可能性としては厳しいと言わざるを得ないが、他の候補者2人を上回る指標も多い。〈つづく〉

