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名手ルメール「“あの最強馬”と同じフィーリング」“特殊な天皇賞・秋”を制したマスカレードボールは超逸材なのか?「まだ中高生」手塚調教師の証言
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島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/11/03 17:20
天皇賞・秋を制したマスカレードボールとクリストフ・ルメール。超スローペースを攻略し、3歳牡馬が世代交代を印象づけた
特殊な流れのレースで浮上する「本当に強い馬」
このレースと同じように、スローで、特殊な流れになったレースとして思い出されるのは、オグリキャップの「奇跡のラストラン」として語り継がれる1990年の有馬記念だ。道中の流れが遅く、勝ち時計は同日の条件戦グッドラックハンデキャップよりコンマ6秒遅くなった。2011年のクラシック三冠馬オルフェーヴルが3歳時に勝った有馬記念も、同日のグッドラックハンデキャップより2秒7も遅い時計で決着した。
捕食動物から逃げる本能を持つ馬にとっては、前に行きたいのに遅い流れのなかで我慢することは非常に苦しく、心身への負荷が大きくなる。オグリとオルフェが勝った有馬記念は、そうした厳しい我慢を強いられた直後に究極の切れ味勝負をしたわけだ。こういう特殊な流れのレースは、本当に強い馬でなければ勝てない。
「まだまだ成長の余地がある」と手塚調教師が言えば、ルメールも「まだ伸びしろがある。体も大きくなれる」と話したように、マスカレードボールが本格化するのはこれからだ。
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現時点でも、超スローでも掛からない精神力の強さがあるし、大きなストライドから距離が延びるのはむしろ歓迎だろう。
スケールは青天井、と言っていいのではないか。
次走はジャパンカップになるようだ。この馬が「イクイノックスの再来」となるか。大きな見どころができた。

