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名手ルメール「“あの最強馬”と同じフィーリング」“特殊な天皇賞・秋”を制したマスカレードボールは超逸材なのか?「まだ中高生」手塚調教師の証言
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島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/11/03 17:20
天皇賞・秋を制したマスカレードボールとクリストフ・ルメール。超スローペースを攻略し、3歳牡馬が世代交代を印象づけた
レース全体の上がり3ハロンが32秒9という究極の切れ味勝負になった。この馬の上がりはメンバー中3位タイの32秒3。最も速かったのは4着に来たシランケドの31秒7だった。昨年のこのレースで前を一気に差し切ったドウデュースが32秒5。こちらは全体が33秒7だったなかで後方から伸びて叩き出したタイムだった。
東京競馬場でのラスト3ハロンは、4コーナーの途中からゴールまで。今年の天皇賞・秋は、4コーナーから全馬がロングスパートをかけてゴールを目指すという、きわめて特殊な展開になった。つまり、ロングスパートのなかでの究極の切れ味勝負だったのだ。だからスローでありながら、逃げ・先行有利にはならなかった。
名手ルメール「イクイノックスと同じフィーリング」
共同会見で、「これまで乗った馬で似たタイプはいるか」と問われ、ルメールはこう答えた。
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「イクイノックスも若いときはエンジンがかかってから(スピードに乗るまで)時間がかかって、だんだん加速してパワーアップした。それと同じフィーリングがあった」
イクイノックスもこの馬同様ダービーで2着に惜敗し、それ以来となった天皇賞・秋でGI初制覇を果たした。管理した木村哲也調教師は同馬を「天才」と表現した。その後も圧巻の強さを見せつづけ、レーティング世界一となった。
マスカレードボールは、イクイノックス級の馬になっていくのだろうか。手塚調教師の口調には熱がこもっていた。
「想像以上の脚でした。今日のレース内容やレース後の息づかいなどを見ると、どこまで行くのか想像できない馬になる可能性を持っている」
まだまだ完成途上だ。
「この秋、放牧先から戻ってから、少年が青年に、小学生から中高生になった感じですが、まだ成人にはなっていません。日本のみならず、世界でも高みを目指して、JRAを代表する馬になってほしいですね」


