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「背中のニキビを食べたことに報酬を払った」大谷翔平ポストシーズンの裏側で…“聖人・トラウト”は虚像だったのか? 元MVPが裁判で語った「驚きの証言」
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byGetty Images
posted2025/10/28 06:00
6年前に亡くなったチームメイトに関する訴訟で証言台に立ったエンゼルスのマイク・トラウト。「球団の顔」からは衝撃の証言が
一方で、もちろん『ザ・ガーディアン』や『CBSニュース』は別の角度から問いも投げかけている。
「もし兆候を感じていたならなぜもっと早く、強く声を上げなかったのか」
そうした問いが浮かぶのも無理はない。トラウトの証言は、彼の誠実さを裏づけると同時に、「リーダーとしてどこまで踏み込めたのか」という新たな議論も呼び起こしている。
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しかし、それでもファンや世論の大半からは、彼を非難するよりも「痛みを伴いながら真実を語った勇気」を評価する声が多かった。
スカッグスの死は、MLBのドラッグ検査制度そのものを変えるきっかけにもなった。事件を受け、MLBと選手会は2020年以降、オピオイド検査と教育プログラムを強化。フェンタニルを含む鎮痛剤の使用を厳しく管理する新制度を導入した。
『ザ・ガーディアン』は「この訴訟は、MLBが長年目を背けてきた“薬物の影”を直視する機会となった」と総括している。
米メディアが報じた「驚きの証言」の本当の意味
スカッグスの死から6年。
いまだに訴訟は続き、真相は完全には解き明かされていない。だが、トラウトの証言は確かに野球界の記録に刻まれた。それは「友情」の証言であり、「良心」の記録でもある。
米メディアが「驚きの証言」と報じたのは、内容の過激さではなく、これまで沈黙を守ってきた球界の象徴が、苦悩を抱えながらも真実を語ったというその行為そのものだった。トラウトは証言台の上で、静かに未来の野球を見据えていた。そしてその視線の先には、もうスカッグスの姿はいない。だが彼の声は、確かに残っている。
「ちゃんと立ち直らなきゃダメだ」――トラウトの一言は、ケイに向けられたものだった。
今、その響きはメジャーリーグという組織そのものに返ってきている。

