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「背中のニキビを食べたことに報酬を払った」大谷翔平ポストシーズンの裏側で…“聖人・トラウト”は虚像だったのか? 元MVPが裁判で語った「驚きの証言」
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一野洋Hiroshi Ichino
photograph byGetty Images
posted2025/10/28 06:00
6年前に亡くなったチームメイトに関する訴訟で証言台に立ったエンゼルスのマイク・トラウト。「球団の顔」からは衝撃の証言が
「背中のニキビを食べたことに報酬を支払った」
クラブハウスではケイが選手から金を受け取るかわりに、「時速90マイルの速球を体に受けたり」「クラブハウスの床に落ちた虫を食べたり」「眉毛を剃ったり」するような“悪ふざけ”をする風潮があったのだという。またトラウトは「自分の背中のニキビを食べたことに対して、ケイに報酬を支払ったことがある」とも証言したと報じられた。
ある日、球団スタッフがトラウトに「その金が悪い目的に使われているかもしれない」と耳打ちした。トラウトの頭に最初に浮かんだのは“ドラッグ”という言葉だった。トラウトは証言で、ケイが落ち着きなく、汗をかいている様子を見たことがあると述べた。
「何を使っているかは分からなかった。でも、あの時、彼(ケイ)に『君には家に二人の子どもがいるだろ。ちゃんと立ち直らなきゃダメだ』と伝えた」
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アメリカの各メディアはこのくだりを報じている。
『ザ・ガーディアン』は、1889年に始まった野球界の薬物遍歴を振り返ったうえで、スカッグスの死と今回の訴訟を「136年間にわたる野球の薬物文化のひとつの章」と位置づけている。つまり、これは個人の過ちではなく、組織がどこまで“兆候”に気付いていたか、あるいは見過ごしていたかを問う裁判だということだ。
球団幹部の1人は「ケイに薬物の問題があるとは知らなかった」と証言したが、トラウトの証言はその認識を揺さぶるものだった。彼は明確に「誰かが何かに手を出しているのではないか」と感じていたと語った。
一方で、トラウト自身は「スカッグスが薬を使っているのを見たことはない」とも述べており、彼の証言が球団の法的責任を決定づけるものではないのもまた、事実だった。

