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「170kmを出す条件はそろっている」佐々木朗希の日本時代の投球フォームを第一人者が解析…貴重証言「彼のピークはこれからやってくる」
posted2025/10/29 06:00
佐々木朗希の特異なピッチングフォームの秘密を、動作解析の第一人者が語った貴重な証言をお届けする
text by

赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph by
Nanae Suzuki
「衝撃でしたね、佐々木朗希くんの投げ方を見た時は。あれは誰にも真似できないし、教えられてできるものでもない。そもそも、指導者もそんなふうに教えませんから」
普通の投手なら打者の頭にいってしまう投げ方
そう語る筑波大准教授、硬式野球部監督の川村卓氏は、「令和の怪物」を大船渡高校時代から最も間近に見てきた動作解析の第一人者である。高3の夏、ブルペンで投げる姿を至近距離で視察し、まず驚かされたのはリリースポイントの高さだった。
「投手はできるだけ前でボールを離すのが基本です。腕を振る距離を出せば速い球が投げられて、ストライクゾーンにも入る。佐々木くんのように高いところ、通常よりもっと手前で離すと、普通の投手なら打者の頭のあたりにいってしまうでしょう」
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ところが、佐々木はその常識外れな高さからストライクを取れる。なぜなのか。
「バレーボールのスパイクのような投げ方だからですね。高いところから打ち込むように腕を回転させるんですけど、腕を振り上げた勢いに背中の動きが加わって、振り下ろす時に胸が前に動き、そこに合わせて腕がパーンと返ってくる(写真6)。そういう一連の動きで、下に向かって投げていくんですよ。とくに背中、腰の使い方が独特で、並外れて優れていると思います」
朗希はバレーもバスケも上手い
実際、川村氏はこの時、教え子でもある大船渡の國保陽平監督(現野球部副部長)から「朗希はバレーもバスケも上手い。何をやらせてもトップレベルです」と聞いている。独特のフォームは、それほどの運動能力の高さに裏打ちされていたのだ。


