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「今日は何か起こるぞ…と思ったんだ」ドジャース同僚が振り返る大谷翔平“奇跡の一戦”直前のある予兆…キケは思わず「彼になるのって、楽しいだろうな」
posted2025/10/23 06:10
NLCSの最終戦で3本のホームランを放った大谷翔平。特に2本目は推定飛距離143mの場外弾という規格外の一発だった
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph by
Getty Images
ロサンゼルスの夜がざわめいた。
ナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第4戦のドジャー・スタジアムで、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が野球の常識を塗り替えた。第1シードのミルウォーキー・ブルワーズ相手に、投げては7回途中まで2安打無失点10奪三振。打っては3本塁打――。
チームのワールドシリーズ出場が決まったこの夜、ドジャースの選手たちは言葉を失い、それでもそれぞれの言葉で“衝撃の一夜”を振り返っている。
マンシーは「“何かが起こる”と思った」
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第4戦の2日前の練習日、大谷はフィールドでバッティング練習を行った。
普段は屋内で調整する彼が、外で打撃練習をするのは異例だった。32スイングのうち14本がスタンドイン。その多くは高々と舞い上がるムーンショットで、1本はライトスタンドの屋根を直撃した。マックス・マンシーは試合当日、その様子を振り返りながら、こんなことを思ったのだという。
「“今日は何かが起こるぞ”と思った。打球がとにかく別次元だった」
ディビジョンシリーズ以降、29打数3安打。結果が出ない日々に、環境を変えて自分を刺激する。焦りではなく、静かな覚悟――それが彼のやり方だった。
マンシーの予感は初回から現実になった。先頭打者を歩かせたあとに三者連続三振を奪い、直後、自ら先頭打者として打席に立った大谷が、ホセ・キンタナの6球目を右翼席に運んだ。先発投手による先頭打者本塁打は、レギュラーシーズンを含めてもMLB史上初だった。チームの士気は一気に跳ね上がり、ドジャースのベンチに火がついた。

