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「ケラモフとやらせろ、舐めんなよ」「お前ら、クレベルに勝てんのか」40代で迎えた全盛期…金原正徳に問う「なぜ格闘技を“やめられなかった”のか?」
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長尾迪Susumu Nagao
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2025/10/05 11:12
金原正徳は『RIZIN.44』でクレベル・コイケを圧倒。「影のフェザー級最強」「格闘技界の裏番長」という評価を裏付ける完勝だった
事前にクレベルの試合動画を入念にチェックし、三角絞めに入るときのクセや腕の取り方を徹底的に研究した。最終的に勝敗を分けたのは組み手の相性と、MMAにおける引き出しの多さだったと金原は分析する。そして満足げな表情を浮かべながら、こう言い放った。
「予想で負けると言われた方が試合に勝つ。これが格闘技の醍醐味じゃないですか。いろいろ言ってきたやつらを一斉に黙らせたのが気持ちよかったですね。当時のクレベルは知名度先行のファイターをことごとく倒していた。そのクレベルを、実力で倒せた。誰も何も言えないじゃないですか。同じ階級のお前ら、クレベルに勝てんのか、と」
「なぜ打撃戦を…」カメラマンが混乱した鈴木千裕戦
クレベルに完勝したことで金原に対する評価はさらに高まり、フェザー級最強の一角と称されるまでになった。当然、次戦はケラモフとのタイトルマッチだ。しかし金原の勝利から約1カ月半後、ケラモフは母国アゼルバイジャンで鈴木千裕の強烈な蹴り上げをアゴに受け、わずか88秒でフェザー級王座を失った。
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タイトルマッチの相手は鈴木に決まった。2024年4月29日の有明アリーナ。41歳になった金原と、当時24歳の鈴木がメインイベントで対峙する。もはや年齢を理由に金原の実力を疑う者はいなかった。
試合前の国歌斉唱で金原は、セコンドの所英男らと落ち着いた表情で君が代を聞いていた。一方、王者の鈴木はセレモニーの間中もせわしなく身体を動かし続け、マットに背中をつけて寝技のアップまで繰り返していた。
試合が開始されてすぐ、打撃に合わせて金原がタックルを決める。しかし、テイクダウンには繋がらない。いつもなら相手を倒して寝技に移行するのだが、お互いにスタンドでの腕の差し合いをしたまま時間が過ぎていく。金原は膝蹴りを急所に受け、回復のためにインターバルがとられる。両者が離れて試合が再開。私はカメラを構えながら、金原がタックルからテイクダウンを奪い、寝技で極める流れをシミュレーションしていた。
だが、あろうことか、金原は打撃での勝負を選択した。まさかストライカーの鈴木を、パンチでKOするつもりなのか? 相手の得意な打撃で勝負しても、金原に勝ち目があるとは思えない。
いったいなぜ、経験豊富な金原がこんな作戦を……。困惑しながらシャッターを切る。やがて鈴木が得意とする右フックと膝蹴りでダウンを奪われ、グラウンドでパンチの連打を浴びてレフェリーが試合を止めた。フィニッシュタイムは4分20秒。私はなおも混乱したままだった。



