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「ケラモフとやらせろ、舐めんなよ」「お前ら、クレベルに勝てんのか」40代で迎えた全盛期…金原正徳に問う「なぜ格闘技を“やめられなかった”のか?」 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2025/10/05 11:12

「ケラモフとやらせろ、舐めんなよ」「お前ら、クレベルに勝てんのか」40代で迎えた全盛期…金原正徳に問う「なぜ格闘技を“やめられなかった”のか?」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

金原正徳は『RIZIN.44』でクレベル・コイケを圧倒。「影のフェザー級最強」「格闘技界の裏番長」という評価を裏付ける完勝だった

 そして自嘲気味にこう口にした。

「最後の最後に格闘技の神様に見放されて……。『持っている人、持っていない人』じゃないですけど、持っているやつはこういう試合で勝つんですよ。自分は、ここぞで勝てなかった。やっぱ持っていない選手だなって改めて思いました」

なぜそれでも「格闘技をやめられなかった」のか?

 金原は鈴木戦での引退を示唆していた。だが、空っぽになったと思われたタンクの底にはまだほんの少しだけ、燃料が残っていた。

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『超RIZIN.4』でのYA-MANとの対戦は自ら希望した。自分よりはるかに若いものの、YA-MANを人間として尊敬し、最後の相手にふさわしいと強く感じていたからだ。

「でも、気持ちが折れちゃいましたね」

 大会のベストバウトと各所で絶賛されたYA-MAN戦の最後の場面について、金原はそう振り返った。打撃を効かされたのではなく、スタミナ切れを起こし、心が折れて試合を諦めてしまった。両者ともに疲労困憊だったが、気持ちの差で負けた。以前なら試合の最後に競り負けることはなかった。それが、終わりを予感していた42歳と、これからピークを迎えるであろう29歳の差なのかもしれない。

 持病の影響で激しい追い込みやMMAの実践的な練習ができなかったのは確かだ。それでも、あらゆる条件を含めて言い訳はない。

「神様のお告げみたいなものだと思います。もういいんじゃないか、って。自分がやめるのはここだと素直に思いました。ヘルニアはあるけど体は無事だし、いいタイミングで引退できたなというのはあります。最後まで相手も、内容も含めて、納得してやめることができました。UFCからリリースされて、終わりかけたファイターだった僕が、現役の最後に格闘技界の盛り上がりの中心に入れた。RIZINには感謝しかないですね」

 わずか数カ月で高校を退学した男は、20歳でのデビューから42歳まで、20年以上も現役を続けた。過酷なトレーニングも、減量の苦しみも、耐えがたいほどの激痛も味わってきた。何度もやめようと思ったが、やめなかった。いや、やめられなかった。

「デビュー戦とまったく一緒なんですよ。根本的な性格の問題だと思います。負けたら悔しいし、勝ったら嬉しい。たぶん負けてばっかりだとダメだし、勝ちばっかりでもやっぱダメだし……。勝ったり、負けたりっていうのもよかったのかもしれないですね。僕は才能があるタイプでもない。勝ち負けを繰り返していたから、泥臭く続けられたのかもしれません」

【次ページ】 金原正徳の信念「格闘技は強さがすべて」

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