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「お尻を叩かないと行かない」日本サッカーの弱点を“海外指導20年”日本人コーチがズバリ…では日本代表は?「森保さんがよく言っていますが」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2025/09/28 11:38

「お尻を叩かないと行かない」日本サッカーの弱点を“海外指導20年”日本人コーチがズバリ…では日本代表は?「森保さんがよく言っていますが」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

海外で指導を続けてきた日本人指導者から見て、日本サッカーと日本代表はどのように見えるのだろうか

「変わりますが、彼らは僕の成功体験がすべて正解で、それを聴いてさえいれば試合に勝てると思いがちです。でもそこは全く別物で、実際に勝つためには、それを超えていかなければならない。そこは間違えないようにとは言っています」

――選手の質はどうですか。

「メソッドを実践しても1年目は結果がでないのは、選手が実践できないからです。体現できる選手がキーのポジションに嵌ったときに勝てるようになった。選手の質は大きな比重を占めます。どんなに優れた戦術を実践しても、またペップ・グァルディオラが神奈川大学の監督をやっても、絶対試合に勝てるかというとそうではない(笑)。それが面白さでもあるし、僕の今のチャレンジでもある。

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 僕は日本人をちゃんと指導したことがなくて――向こうで現役を引退して向こうで指導者になったので、日本人を教えることに新鮮味を感じながら今はやっています。ずっと外国人と付き合っていたので、最初は日本語が出なかったです。半年ぐらいたって、ようやく英語と日本語が半分混じるような指導になった」

日本人はお尻を叩かないとゴールへ行かない?

――とはいえ日本に戻られて選手のクオリティは相当上がったと思いませんでしたか。

「僕も大学からプロになりましたが、サッカーの質は当時の大学サッカーからはもの凄く上がった。賢くなったし、サッカーを良く理解している。そういう教育を受けた子が全国から集まっているので、技術も能力も上がったのは間違いないです。

 ただ、さっきの話で言うと、日本人はゴールに行ってくれない。外国人は放っておくとみんながゴールに行くけれど、日本人はお尻を叩かないと行かない(笑)。そこの違いはあります。遠回りしている感じで、民族の違いなのでしょうかね」

――プラットフォームについてはどうですか。

「ラグビーのオールブラックスは、すべてのスポーツの中で歴代の勝率が断トツなんです。ファナウというマオリ語で、直訳すると仮想家族という意味の言葉があって、これは意味がプラットフォームとまったく同じなんです。グラハム・ヘンリ―という有名な監督がいますが、彼は『人がオールブラックスを作るのではなくて、オールブラックスが人を作っていく』と言っている。要はプラットフォームのことで、そこに入った瞬間――あの黒いジャージを着た瞬間に誰もがパフォーマンスが上がる。

 オールブラックスのファナウを受け継ぐマオリ人ファシリテーターがいます。僕たちもU-20W杯に行く前のキャンプに、その人を呼んで研修を受けました。オールブラックスが採用している結束力を高めるマオリのやり方――人と人とが深くつながっていくやり方を実践してもらいました。1日目は何をして2日目は何をすると段階を踏んでいくのですが、それこそ涙を流しながらみんなが自分のことを話したり、そうやってW杯で世界と戦うNZのアイデンティティを作り上げた。シティグループに入ったときに、これは一緒だねとみんなで話していました」

その話は森保さんともよくしますが…

――日本もW杯に優勝したいのであれば、そういうことをやらないと駄目ですね。

【次ページ】 グローバル時代に不可欠なアイデンティティ

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