「お尻を叩かないと行かない」日本サッカーの弱点を“海外指導20年”日本人コーチがズバリ…では日本代表は？「森保さんがよく言っていますが」

　宮澤浩インタビューの最終回（全3回／第1回からつづく）である。

　選手としては決して突出していたわけではなかった宮澤は、どうして現役引退後も海外で指導者としての活動を続けたのか。そこで彼が感じた、日本人としての長所と短所、さらには必然的に意識せざるを得ない、日本人のアイデンティティとは……。

　そこにはサッカーだけに限らない、日本人が直面するグローバルな課題への示唆がある。

海外でしか得られなかった“日本人コーチの価値”

ADVERTISEMENT

――現役時代の最後も含め、20年以上オーストラリアとニュージーランド（以下NZ）に居続けた理由は何ですか。

宮澤（左端）は海外でもプレーした　©Getty Images

「単純に楽しかったからです。僕にしかできないこと――日本だと、僕みたいなキャリアはごまんといますし、その中で違いを作り出すのは簡単ではない。逆に日本人が海外で、日本人のメンタリティと日本人のサッカー観で指導して、それを有難いと思ってもらえることはなかなかない。僕でなければできないことを、NZとオーストラリアではやれた。そこのやりがいはありました」

――指導者となると、選手以上にカルチュアルギャップやコミュニケーションギャップ、アグレッションがあったと思いますが、そこはどう埋めていきましたか。

「指導者はU-10から始めました。現役最後のときでしたが、いい意味でちょっと異色だった。そのころの英語力は大したことなくて、自分の思うような指導を日本語でできたらいいのにと思いながらやっていました。なんて言うのだろうと頭の中で思いながらの指導です。

　それが逆に、このコーチは何を伝えたいのかと、選手が耳を傾けてくれた。それから日本人らしく、日本人の僕が持っているサッカー観で指導する。そこをブレずにやり続けたのは良かったかなと思います。

　今は高橋秀人君（元日本代表MF、FC東京などに在籍）が僕のクラブ――オークランド・ユナイテッドは、ふたつのクラブを合体させてできた新しいクラブで、僕はオーナーではないですけど、今も3人のボードメンバーのひとりです。そこで僕がやっていた指導者のポジションを、今は高橋君にやってもらっています。彼にも自分自身のアイデンティティで指導していくことが、向こうでは価値になるという話はしていて、実際にいい評価を得ています」

英国式フットボールと日本人の違い

――日本人のアイデンティティとは、具体的にどういうものでしょうか。

【次ページ】　シティで得た教訓と“資金力のリアル”