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“お気楽者の元問題児”がバロンドール「FWはサボっちゃいけない」「自分の出来の悪さで圏外だったけど」デンべレ28歳が語る大変身の真相
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2025/09/23 17:03
2025年のバロンドールに輝いたデンべレ。“お気楽者の問題児”が世界一の選手に覚醒できたワケとは
「それはわからない。僕たちは喧嘩をしたわけではないし、彼は監督としての選択をしたまでだ。何度も言っているけど、チームはシーズンの後半にレベルを劇的に向上させ、僕自身のパフォーマンスも大きく上向いた。ベンチから外れたことで、何かが変わったわけじゃない。開幕当初から、僕はゴールを決めたかったしアシストもしたかった。チームのために貢献したいと願っていた」
――それではPSGにとってのシーズンのターニングポイントは、0対2から逆転勝利を得たマンチェスター・シティ戦(グループリーグ第7節、1月22日、4対2でPSGの勝利)だったというのは、あなたも同意しますか?]
「そう思う。あの試合から後は、僕らはほとんど負けなかった。シティ戦当時、僕らはCLランキングでは26位に過ぎなかった。50分過ぎに0対2とリードされたときには、ほとんど絶望的だった。それからバルコラが股抜きのパスを僕に送り、1点を返してチームは自信を取り戻した。あの試合がすべてを変えたと思う。そしてラウンド16でリバプールを倒したとき(0-1、1-0、PK4-1でPSGの勝利)には、『これは最後まで行けるぞ』と思えるようになった。アストン・ビラとの準々決勝第2戦(4月15日)は、厳しい戦い(2-3で敗戦)になったけど、何も不安は感じなかったし決勝に進めると確信していた。ただ、これまで何度も痛い思いをしてきた悪夢が、胸に去来しなかったわけじゃないけれども……」
あの黄金のボールは、特別なモノだ
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――CLを制覇した今、次のターゲットはバロンドールだと言えますか?
「難しい質問だ。でもサッカー選手にとってバロンドールは、個人に授与される聖なる杯だ。子供の頃からの夢でもある。僕もテレフット(日曜朝に放映されていた有名なサッカー番組)で、バロンドールを授与されるために選手が招かれるのを見て興奮していた。あの黄金のボールは、まさに特別なモノだ」
――候補者にノミネートされたのは今回が初めてですが、本命のひとりとして注目される日が来ると思っていましたか?
「まずは30人のリストに入りたかった。これまでの僕は、怪我や自分の出来の悪さでずっと圏外だった。でも昨季はいいシーズンを送ることができたうえに、本命のひとりに挙げられるのは、それだけですでに勝利であるといえる。もちろんいつかは獲りたいと思っている」
――自分を語るのは難しいですが、どうすれば素晴らしいバロンドールになると思いますか?
「その質問に答えるのは難しい。決めるのは僕ではなくて、投票するジャーナリストたちだからだ。個人的にはずっと同じ気持ちでプレーしてきた。子供の頃から、スタジアムに来る人たちに喜びを与えたかった。ドリブルは大好きだけど、チームのために僕は労を惜しまないし、ゴールのお膳立てもする。もちろん自分でも得点を決める。
そこから先は、それぞれの投票者の好みの問題で、彼らは彼らの考えで投票する。ウスマン・デンベレに好意的であれば嬉しいし、好まれなくとも僕の人生は続く。結果は神のみぞ知るだ」〈第1回からつづく〉

