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“お気楽者の元問題児”がバロンドール「FWはサボっちゃいけない」「自分の出来の悪さで圏外だったけど」デンべレ28歳が語る大変身の真相
posted2025/09/23 17:03
2025年のバロンドールに輝いたデンべレ。“お気楽者の問題児”が世界一の選手に覚醒できたワケとは
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
2024‐25シーズンのバロンドールを獲得した、ウスマン・デンベレ(28歳)のインタビュー後編である(素材提供パリ・サンジェルマン=PSG TV、全2回/第1回からつづく)。
昨季はリーグアンで得点王と最優秀選手、チャンピオンズリーグ(CL)でも最優秀選手に輝いたデンベレは、バロンドールの大本命として目され、9月22日にパリ・シャトレ劇場でおこなわれた表彰式で、フランス人選手6人目(レイモン・コパ、ミシェル・プラティニ、ジャンピエール・パパン、ジネディーヌ・ジダン、カリム・ベンゼマに次ぐ)の栄誉に輝いた。
前年までは候補者リストにすら入ったことのなかったデンベレが、誰もが認めるトップ選手の仲間入りを果たしたのは、プレー面での進化だけでなくかつては素行面に問題があった人間性も成熟し、リーダーとしても覚醒したからだった。
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もちろんそれは監督のルイス・エンリケが、チームとデンベレ自身に与えた影響抜きには語れない。そして長く胸に秘めていた、バロンドールへの熱い思い……。デンベレが語り続ける。
「君は運が良かったな!」と大声で叫ぶんだ
――あなたはプレスをかけるスイッチの役割を担っています。守備への献身は人々の琴線に触れましたが、守備面のトレーニングも精力的に行なったのでしょうか?
「とりわけポジショニングには細かく気を使ったけど、相手ディフェンス――ディフェンダーやゴールキーパーを混乱させるためにスプリントの強度もあげた。彼らにボールをリリースするための時間を与えない。時間があれば的確なパスが配給できるから、プレスをかけたことが無駄になってしまう。いい位置取りをしている選手に対して、一瞬たりとも考える時間を与えないように、自分にできるあらゆることを行うようにした。
ボール保持者はできる限り素早くプレーせざるを得ない。そうしなければ、僕が圧力をかけてボールを奪うからね。プレスをかけるのは僕の性に合っている。ゴールキーパーがボールを放った瞬間に、僕は彼らの正面に立って『君は運が良かったな!』と大声で叫ぶ。こんなに楽しいことはないよ」
――ルイス・エンリケはあなたに多大な信頼を寄せていて……。
「PSGとサインをしたときから、僕を信頼してくれた。ピッチ上のきめ細かなアドバイスと同時に、自由にプレーさせてもくれる。彼にはよくこう言われる。『君ならひとりですべてを解決できるだろうから、君にしてもらいたいことはせいぜい2つか3つだ』と。自由に動き回れるのは素晴らしいし、好きに行けるのはとても気に入っている。自由に動けるポジションを得て、僕は本来の力を発揮できるようになった」
ストライカーはサボってはいけないと僕は思ってる
――走る量が圧倒的に増えて、守備の労を厭わなくなりました。特にCL決勝(5月31日、ミュンヘン、5対0でPSGの勝利)での、インテルGKヤン・ゾマーへのプレスは印象的でした。ストライカーは守備を嫌う傾向にありますが、あなたは好んで守っているように見られます。

