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“お気楽者の元問題児”がバロンドール「FWはサボっちゃいけない」「自分の出来の悪さで圏外だったけど」デンべレ28歳が語る大変身の真相 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byKiichi Matsumoto/JMPA

posted2025/09/23 17:03

“お気楽者の元問題児”がバロンドール「FWはサボっちゃいけない」「自分の出来の悪さで圏外だったけど」デンべレ28歳が語る大変身の真相<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

2025年のバロンドールに輝いたデンべレ。“お気楽者の問題児”が世界一の選手に覚醒できたワケとは

「その通りで、ルイス・エンリケのような監督の下では、守備をしなければポジションを奪われてベンチを温めることになる。ストライカーはサボってはいけないと僕は思っている。攻撃のときだけ力を出すのではなく、どんなときも労を惜しまずチームのために攻守に働く。全員攻撃全員守備が基本で、PSGがヨーロッパチャンピオンになれたのも、チームの誰もがそう思っているからだ。

 アクラフ・ハキミを考えればいい。ディフェンダーにもかかわらず、CL準々決勝と準決勝、決勝でゴールを決めた。守備も強固だが攻撃力も素晴らしく、攻守両面で常に目いっぱいの仕事をしている。僕も同じで、シーズン初めに監督にこう言われた。『チームで最初のディフェンダーになって、若い選手たちに手本を示してくれ』と」

デンべレには〈お気楽者〉のイメージがあるが

――PSGというチームが醸し出す連帯感は、いったいどんな感じなのでしょうか。

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「家族のようなものだ。自分の家族よりも長い時間を一緒に過ごしているから、当然ながら絆が生まれる。もう2年もそうやって過ごしている。チームの結束は高まり、信頼感も強まった。特に昨シーズンは、それが結果になって現れ、本当に素晴らしかった。誰もがチームのことを真剣に考え、最善を求めてチームメイトのために最大限の努力を惜しまなかった。その努力が報われ、僕らは本物の家族になった。勝ったときも負けたときも結束は固かった。監督は繰り返しこう言っていた。僕らはともにプレーをするチームであり、全員で走り、全員で攻めて全員で守るのだと」

――リーダーの役割はどのように担いましたか?

「最も普通のやり方――自分自身を保ち続けた。シーズンが始まったころは監督とも話した。若手の見本になると同時に、ベテランに対しても手本となるよう求められた。具体的にはピッチ上では労を惜しまずプレスをかけ、守備でも攻撃でも最大限の力を発揮することだった。日常のグループの中では、普段の僕であり続けた。そこは変えられないし、チームメイトたちとふざけあっていた。でも真剣にやるべきときはこのうえなく真剣だった」

――あなたには〈お気楽者〉のイメージがあると同時に、他人に対して気を使っているようにも見えます。レキップ紙でデジレ・ドゥエが語っています。『僕がPSGに馴染むのを助けてくれたし、フランス代表でも同じことをしてくれている。兄のような存在だ』と。そうした気持ちを持ち続けられるのはどうしてですか?

「僕にとってはもの凄く大事なことで、レンヌでプロデビューしたとき、年上の選手たちが僕を助けてくれた。それで僕も、チームメイトの役に立ちたいと思うようになった。

 サッカーはチームスポーツだ。自分のことしか考えないなんてあり得ないし、それでは試合に勝てない。若い選手を手助けするのは僕には自然なことだ。それにデジレは、レンヌの出身だからね(笑)。でも彼だけじゃない。他のフランス人の若手や、ジョアン・ネべスのように外国から来た選手にも、分け隔てなく手を差し伸べている。ジョアンなんてまだ20歳だけど、雰囲気はまるで30歳のようだよ(笑)」

――ドゥエはバルサでプロデビューしたころのラミン・ヤマルを彷彿させますか?

【次ページ】 ルイス・エンリケこそがPSGのパトロンだ

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